だが、どうしても1人で聞かなければならない場合もあるだろう。
「そんな時は『今は話を聞く余裕がないので、別の日にしてください』と言ってその場を離れたほうがいい。気が動転している時に今後の治療法は‥‥なんて言われても、判断できないはず。まずは病院を出て冷静になってから、再度訪ねることをお勧めします」
告知で仮に余命を告げられても、そのまま鵜呑みにするべきではないとも、水上医師は断言するのだ。
「余命なんていうものは、医者が経験をもとに、何となく決めているだけのもの。医者は余命を短く言う傾向があるし、第一、受けなくていいショックを受けて、治療にいいことは一つもありません。余命はウソだと思っていいし、私自身は余命を告げる医師も失格だと思っています」
ともあれ、医師からがんの告知を受け、いよいよ治療がスタートすることになった。がんは年齢やできる場所、進行度、ステージにより治療法が異なるが、昨今では「一切治療しない」という選択も話題になった。
「確かに、がんは人生観や死生観によっても治療方法は異なります。ただ、一切治療しなくていいというような極端な情報には惑わされないほうがいい。初期であれば治せる可能性は高いし、治療を受けたことで元気になった患者さんがたくさんいるのは事実。全てを一概に考えるのは間違いだということです」
ところで、入院中に医者との間で意思の疎通がうまくいかない、という話をよく耳にするが、
「ズバリ、遠慮しないで医者を代えてもらったほうがいいですね。医者の中には自分の考えに固執している人も多いし、担当医に耐えられない場合は、きちんとそう申し出るべき。患者さんの中には苦しい治療を断ったり、担当医を代えることに躊躇する方もいますが、自分の命がかかっているんだから、絶対に遠慮してはいけません。医者を選ぶのも自分の責任。それを忘れないでください」
そんな場合はベテランの看護師に相談し、看護師を通して伝えてもらうといい。
最後にズバリ、腕のいい医者を見つけるためにはどうしたらいいのか、と水上医師に聞くと──。
「例えば、地元の病院でがんと診断されて大学病院に紹介状を書いてもらう時、診断した医者に『先生だったら誰に手術してもらいたいですか?』と素直に聞いてみるんです。すると『あの病院は空いているけどね、実は腕は超一流なんだよ』なんていう医者がいたりする。医者と友達になるつもりで信頼関係を作れば、アドバイスしてくれるはずです。医者を味方にする。それが自分の命を守る最善にして最大の防御策になるのです」
今や生活習慣病と同様、誰もがかかりうるがん。だからこそ間違った情報に惑わされないことである。