健康保険制度がある我が国では、誰もが平等な治療を受ける権利がある。ところが実際には病院や医師の選び方、さらに医師への接し方によって、受ける治療に大きな差が生じ、命の危険にさらされるケースが多いというのだ。医師に殺されるも生かされるも、患者の知恵しだい──。
「本来、サービス業というのは支払った金額に応じたサービスが提供されるもの。ただ、医療はサービス業の中でも特殊で、消費者である患者さんに決定権がない場合が多い。これはサービスを受ける側があまりにも無頓着すぎるから。そして、そこに殺される患者と生かされる患者との決定的な違いがあるんです」
こう語るのは、先頃出版した「殺される患者、生かされる患者 100点の治療を受ける方法」(ワニブックス)の著者で内科医の児玉知之氏だ。
医師といえど人間。理不尽な態度で接したり、真剣に病気と向き合う態度がない患者には必要以上の治療を施さない場合がある。医師の対応いかんでは、本来受けるべき治療を受けられず、結果、それが死につながることもあるのだ。児玉氏がレクチャーする「医者に殺されない患者になる知恵とテクニック」とは──。
病院を選ぶ際に、すでに分かれ道は出現している。
「イギリスなどの場合はプライマリードクター制度というのがあって、地域ごとに医者が割り当てられているため、そこで専門的な治療が必要と判断されて初めて高次医療施設に行くことになります。つまり、フリーアクセスではないということ。ところが日本は極端な話、自分がガンだと思えば直接がんセンターに行くことも可能で、病院の選び方には大きな自己責任が伴う。だからこそ、慎重にすべきなんです」
にもかかわらず、「近所にあるから」「家族が通っているから」などの理由で通院先を選ぶケースが多い。
「最近は医療が高度になったこともあり、より細分化されているため、昔のようにオールマイティに診察できる医者はまずいません。ですから、ネットで調べるなり電話で確認するなりして、事前にその医者の下調べをしていくことが必要。それが自己防衛手段になります」
医療機関の「得意分野」を簡単に見抜くには、まずそのクリニックが標榜している順番を確認することだ。
「開業医の場合、例えば『循環器内科・内科・小児科』とあったら、最初にある循環器内科が専門だと思えばいい。多くの医者が内科と書いていますが、極端な話、お手軽だから。専門でなくても標榜するのは自由だし、罰則もありません。だから美容整形しかできない医者が内科の看板も掲げてビタミン点滴をしたり、インフルエンザの時期だけ予防注射をやったりするケースもあります」
ぶっちゃけ、個人開業と総合病院、どちらを選ぶべきなのか。
「双方ともにメリット、デメリットがありますが、開業にはそれなりのリスクが必要なので、開業医には最低10~15年のキャリアが担保されています。そのため、総合病院で研修レベルの医者に当たって参った‥‥みたいなことが起こる可能性は低いはず。ただ、1人でやっているのでカバーできる範囲が限られ、専門外のことに対応できないケースもあります」