ちまたに氾濫する「健康常識」を信用すると早死にする──。こう驚きの警告を発するのは、手術、抗がん剤、放射線の3大治療をはじめとする「標準がん治療」に敢然と異を唱え続け、長年にわたる功績で12年には第60回菊池寛賞を受賞した近藤誠医師である。これまでの「当たり前」を根底から覆す、健康長寿の真の秘訣をズバリ直言!
── 近藤先生は世間に流布する、いわゆる「健康情報」はウソだらけだ、とする著書を出されましたが、そこには「本当の健康常識」なるものが、科学的な実証データとともに網羅されています。まず、健康長寿のために不可欠な心構えから教えてください。
近藤 医者や病院に近づかないことです。毎日の御飯がおいしい、自覚症状も特にない。このような健康な人が健診や人間ドックで「異常」を指摘され、医者にかかって治療を受けると、確実に寿命を縮めます。「病気を未然に防ぐ」との大義名分で成り立っている現在の医療システムは、すべからく「健康人」を「病人」に仕立て上げて金を儲けるための錬金術なのです。
── ということは、健診も受けないほうがいい、と。
近藤 そのとおりです。健診や人間ドックなどで正常と異常の境目とされている基準値は、関連する学会が権益の維持や拡大のために勝手に定めたもので、根拠はありません。そもそも、基準値は健康な人たちを集めてγ-GTPなどの値を測定し、上下2.5%に該当する値を切り取って決められたものにすぎません。つまり、健康な人が検査を受けた場合、1つの測定項目だけで、上下合わせて5%の人が自動的に異常値と判定されてしまうのです。
── では、医者に近づくとどれくらい「早死に」するのでしょうか。
近藤 フィンランドで行われた比較試験の結果を見てみると、40歳から55歳までの男性の会社管理職のうち、高血圧や高血糖などの生活習慣病の人たち、もしくはそれが疑われる人たち1200人を2つのグループ、すなわち医療介入を行ったグループと、何もせずに放置したグループに分け、両グループの生死を15年もの間、追跡しています。
── 死亡数の差は、年を追うごとに開いていますね‥‥。
近藤 比較試験の開始から15年後に明らかになった結果は、これまでの常識を完全に覆すものでした。なぜなら、放置群と、薬の数が多いほど死にやすくなることが判明したのです。さらに、5年後に生き残っていた約340人を追跡した調査でも同様の結果が出ました。つまり、病気の人でもこの状況ですから、健康な人が健診などで「異常」を見つけ出されて薬を飲まされるのは、まったくもって有害無益ということになります。