アイドル活動をしていた20歳の女子大生・冨田真由さんが、男性ファンに襲われた刺傷事件。事件後にはアイドルの握手会が数多く中止になるなど「現場」への影響は甚大だ。そんな状況のなか、音楽アーティストが直面する危険性について音楽ライターはこう指摘する。
「被害者女性はアイドルという肩書で紹介されていますが、今回も女性アーティストが集うイベントに出演予定だったように、最近は歌で勝負する『ギター女子』として活動していました。miwaや大原櫻子、藤原さくらといった著名アーティストのように事務所のバックアップがあればいいのですが、ほとんどのギター女子はアマチュアミュージシャンで、大人のサポートが付いていません。そのためファン対策も自分でこなさなければならず、厄介事に巻き込まれる危険が高まっています」
これがアイドルだと、「運営」と呼ばれる大人たちが活動をサポートしているケースがほとんど。ファンの側にも一定の応援作法が出来上がっており、現場ではファン同士の監視効果も機能するため、悪質なトラブルに発展するケースは少なくなっている。
それに対してギター女子の場合、応援の作法がアイドル分野ほど固まっておらず、ファン同士の結束や交流も薄いため、悪質ファンを排除する自浄作用が働きづらい。そしてもう一つ、アイドルよりも悪質ファンを呼び込みやすい理由があるという。
「ギター女子は基本的にソロで活動しており、横の結束も薄め。そのため悪質ファン情報の共有といった連携が取りづらく、ライブ会場への出入りも無防備になりがちです。これがアイドルだとコラボや合同イベントを通じて仲間意識が育まれ、お互いにサポートしあう互助精神も盛んなので、現場でのトラブルが少なくなる効果を生んでいます」(前出・音楽ライター)
ギター女子の良さはギターがあればどこでも歌えること。今では曲をネットで公開し、SNSでファンと交流することで、大人のサポートなしでも存在感を示すことが可能だ。そんなギター女子たちの希望の芽を摘みかねない今回の凶行。今は何よりも被害者の回復が望まれる。
(金田麻有)