元アイドルで、現在はシンガーソングライターとして活動する女子大生がファンの男性に刺された事件で、マスコミの報道が明後日の方向に過熱。事件の本質ではなく地下アイドル業界を興味本位で取り上げる内容に、アイドル関係者から怒りの声が巻き起こっている。アイドル誌のライターが憤慨した様子で語る。
「多くの報道が『地下アイドルは危険』という偏見に満ちているのが現状です。現役アイドルへの取材では『ファンに恐怖を感じたことは?』や『地下アイドルは危険な仕事か?』といった結論ありきの質問に終始。さんざん話を聞いておいて、本編で使ったのは『プレゼントのぬいぐるみは(盗聴器対策で)何回も洗っている』という箇所だけだった番組もあるなど、事件の本質に迫ろうとする意図が感じられません」
そもそも今回の事件はアイドル業界の問題ではなく、根本はストーカー問題だ。警察に対しては過去のストーカー事件から何も学んでいないとの批判も大きいが、その意味ではマスコミも同罪で、地下アイドルを異端視する報道に終始しているのである。そんな姿勢に音楽ライターが警鐘を鳴らす。
「アマチュアミュージシャンの世界では、アイドル分野ほど演者とファンの関係性が成熟していないため、ストーカー気質の厄介なファンに悩む女性アーティストが少なくありません。最近はギター女子への注目が高まっていますが、彼女たちのほうが地下アイドルよりも危険な環境に身を置いているとさえ言えます。しかしマスコミは被害者女性のアーティスト的な側面をほぼ無視しており、音楽分野でのストーカー問題が注目されないという危機感さえ感じますね」
アイドル業界やアマチュア音楽業界が対策に取り組むなか、その異様な報道姿勢ばかりが目立つマスコミ。これでは「マスゴミ」と批判されるのも無理はないだろう。
(金田麻有)