現在は小劇場などでフリーの舞台女優をするユミさん(19)=仮名=も、声を震わせながら戦慄の体験を明かしてくれた。
「居酒屋でバイトをしながら芸能活動を続けています。疲れて帰って玄関でバタンキューと気を失って、目が覚めたら部屋の中で男の人がタンスの中を探っていました。私の体に被害はなかったのですが、今考えても身がすくむ思いです」
まさに危機一髪である。
しかし、こうした暴走ファンでも、いったん失えば、人気商売のアイドルにとっては死活問題だ。それだけに、その心境を逆手に取って積極的にファンと交流するアイドルも少なくない。フリーアイドル・優月心菜さんは言う。
「ブログでバッグや時計などをオネダリしたり、中には『Amazon』の『ほしい物リスト』を公開し、バイト感覚でアイドルをしているケースもあります」
心菜さんは続けて──、
「実際にファンから同じ品物を複数貢がせると、1つを残して質屋に売り払う。それで生計を立てている『キャバドル』もいるくらいです。また、オフ会と称して、温泉旅行やバーベキューを開催する『接触アイドル』、さらにはブログなどで個撮(個人撮影会)の相手を募集し、1対1で会う『出会いドル』もいます」
ここまでくればキャバ嬢の店外デートか出会い系と同レベルだろう。グラドル・吉沢さりぃさんが補足する。
「個撮は半日から1日の拘束で、5万~10万円程度のギャラで応じているアイドルがいるようです。こうした撮影はもちろん、屋外ではなく室内で行われます」
もはやアイドルとは名ばかりの「アイドルもどき」と言うべきか。常軌を逸した過熱ファンを生む背景には、「アイドル」「アイドルもどき」のこうした「危ない営業活動」も影響しているのかもしれない。
とはいえ、フリーの舞台女優・ユミさんは、こう告白するのだ。
「私が出演する舞台にはチケットノルマがあるので、1枚2枚といわず、まとめて買ってくれる太いヒイキさんが現れたら、誘いに乗ってしまうかもしれない」
事件後、岩埼容疑者は3年前にも別のアイドルのブログに「殺す」と書き込み、警察から呼び出しを受けていたことが明らかになっている。アイドルライター・村山義典氏があらためて事件を検証する。
「冨田さんが時計を容疑者に返したことで、容疑者を逆上させてしまったのかもしれない。本来は相手にせずに放っておくのが最善の策だった。少なくとも、事務所の大人が対応していれば、最悪の事態は防げたかもしれません」
凶行から1週間を過ぎても、冨田さんは意識不明の状態が続いている。アイドルとファンの近すぎる距離ゆえの「接客攻防」が、これ以上、凄惨な事件を誘発しないことを祈るばかりだ。