スポーツ

追悼「アーノルド・パーマー」引退後の「好々爺」素顔

20161013i

 ゴルフ界のレジェンド、アーノルド・パーマー(享年87)が9月25日に米ペンシルバニア州の病院で亡くなった。輝かしい実績を残した名選手であり、ゴルフを世界的な人気スポーツに押し上げた立て役者でもあった。

 在米ゴルフジャーナリストの舩越園子氏がその偉大な功績をたたえる。

「パーマーは攻撃的なプレースタイルで世界中のファンを魅了しましたが、プレー以外の立ち居振る舞いも魅力的でした。“キング”として名をはせた全盛期も、観衆と気さくに会話をし、女性ファンの声援にはウインクで応え、ファンサービスに徹していたそうです。“アーニーズ・アーミー”と呼ばれる熱狂的なファン集団を生み出し、現在のゴルフ人気の礎を築いたのです」

 その足跡を振り返ってみよう。パーマーは1929年9月10日生まれ。クラブプロだった父の影響でゴルフを始め、54年の全米アマゴルフを制すと翌年プロデビュー。58年にマスターズ初優勝を飾り、60年代には好敵手のジャック・ニクラウス、ゲーリー・プレーヤーとともに「ビッグスリー」を形成した。

「父親から『いつでも力いっぱい打て』という教えを受けたパーマーは、その言葉どおり、果敢な攻めのゴルフで何度もドラマを生み出しました。60年の全米オープン、首位に7打差をつけられた最終ラウンドでパーマーは大逆転優勝を飾るのですが、1番のミドルホールをワンオンさせたドライバーは、伝説として語り継がれています。安全に“刻む”ことをしないプレースタイルはまさにテレビ向きだったかもしれません」(ゴルフ誌編集者)

 黄金期を知るゴルフ漫画家の古川一朗氏が語る。

「パーマーの代名詞がインパクト後に左手を高く上げる“ハイフィニッシュ”。右腕の力が強すぎて、フックボールになるのを防ぐために編み出されたそうなのですが、その独特のスイングを、多くのゴルファーがまねたものです」

 ビッグスリーは60年代に幾度もそろって来日。発展途上だった日本のゴルフ界に大きな衝撃を与えた。

「3人のマッチプレーを生で観戦したプロゴルファーの知人から、そのパワフルなスイングに圧倒されたと聞きました。パーマー同様、他の2人もグリーンの芝を削り取るように打つ、と。見た目はダフッていても、ボールにはしっかりとバックスピンがかけられていたことに驚いたそうです」(前出・古川氏)

 ゴルフの魅力を世界に広めるとともに、実業家としても成功を収めたパーマー。晩年は小児医療施設を支援するなど、社会貢献にも尽力。93年に渡米した前出・舩越氏はじかに接し、その温かい人柄に感銘を受けたという。

「初めてお会いしたのは96年、パーマーがホスト役を務める大会『アーノルド・パーマー招待』の練習日。『写真を撮らせてください』とお願いしたら、笑顔でポーズを取ってくれました。当時60代後半でしたが、まるで俳優のように格好よかったのを覚えています。ゴルフ場の近くで道に迷った時に、たまたま通りかかったパーマーに『どうしたんだ?』と声をかけられて、助けてもらったこともありました」

 現役選手たちにとっても、パーマーは偉大な道しるべとなった。

「『アーノルド・パーマー招待』では、大雨でコースの一部が冠水したことがあったのですが、パーマーみずから整備するために長靴を履いてジャブジャブと水たまりに入っていった後ろ姿が今でも忘れられません。表彰式では肩を叩いて勝者をたたえ、それと同じくらい敗者にも気遣いができる人で、『私だって、よく負けたもんさ』と声をかけていました。引退後も多くのゴルファーの見本であり続けました」(前出・舩越氏)

 現役時代はパーマー・チャージと言われた攻撃的なゴルフでファンを熱狂させ、引退後は好々爺として周囲の誰からも愛された。

 米ツアーでは歴代5位の通算62勝。マスターズの4勝を含め、メジャー大会では7度の栄冠に輝いた。パーマーが残した功績は、数字だけでは測れない。

カテゴリー: スポーツ   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
3
沖縄・那覇「夜の観光産業」に「深刻異変」せんべろ居酒屋に駆逐されたホステスの嘆き
4
段ボール箱に「Ohtani」…メジャーリーグMVP発表前に「疑惑の写真」流出の「ダメだ、こりゃ!」
5
巨人が手ぐすね引いて待つ阪神FA大山悠輔が「ファン感謝デー」に登場する「強心臓」