チョコレートは「カカオ豆」から皮と胚芽を取り除き、発酵・焙煎させた「カカオマス」が主原料で、ワイン同様、ポリフェノールを多く含む食品として知られているが、
「ポリフェノールには血糖値を下げる効果がありますが、これはインスリンの抵抗性を改善することで、少数のインスリンでも効き目が強くなるためです。カカオに含まれるカカオポリフェノールには、血管壁をしなやかにし、血圧を下げ、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やす働きもある。また、活性酸素の働きで、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が超悪玉化することも防いでくれます。ですから、1日に板チョコ半分(25グラム)ほど食べると、動脈硬化による心臓病や脳梗塞などのリスクを減らすことが期待できる、というわけです」
さらに、ポリフェノールには脳の神経細胞の成長を促す物質が含まれているため、認知症予防効果も期待できるという。
「糖尿病になると認知症になるリスクが約3倍高まることは、よく知られる話。ポリフェノールには、認知症予防効果を発揮することで注目される『BDNF』という物質が含まれています。これは脳内の神経細胞の成長を促したり維持したりする作用を持つタンパク質で、記憶力や認知力に重要な影響を及ぼすとされているんです」
BDNFは脳の中でも記憶形成をつかさどる海馬に多く存在するが、本来は加齢とともに減少してしまうのだとか。
「ところが実験データによれば、カカオ含有量70%以上のダークチョコレートを毎日25グラム食べた結果、BDNFが上昇。つまり、チョコレートを摂取することで、認知機能の低下を予防できる可能性があるということです。カカオポリフェノールは抗酸化作用が高いので酸化ストレスが減り、脳の血流量が増えることもBDNFの増加に関わっているのでは、と考えられています」
それだけではない。ポリフェノールには「ガンの発症、増殖」を抑え、その進行を妨げる作用もあるというのだ。
「ガン細胞が広がるメカニズムは、第1段階で正常細胞のDNAが発ガン物質の作用で傷つけられて変異細胞となり、第2段階ではそれが促進物質の作用で異常な増殖性を持って『ガン細胞』へと変化していきます。それを防ぐためには進展を妨げる作用のある食品をとることが大切で、ポリフェノールにはこの作用があることがわかっています」
また、チョコレートの甘みや匂いは気分を豊かにし、精神安定効果もある。
「私も間食はもっぱらチョコレートですが、カカオ70%以上の高カカオチョコレートには適度な苦みがあり、これは高カカオに多く含まれる『テオブロミン』という成分が神経を鎮静化し、精神をリラックスさせてストレスを減らす作用があるからです。さらにチョコレートの甘い香りや、口の中でとろける感触が生み出す幸福感が精神安定作用を持つセロトニンの分泌を増やし、イライラを解消してくれるため、うつ病への効果も期待できるんです」