品物と交換できる「クーポン」
生活保護問題で大きく頭を悩ませているという点では、日本最大の日雇い労働者の街、西成を抱える大阪も事情は同じだ。何しろ「あいりん地区」は、3人に1人が生活保護受給者という地域。橋下徹大阪市長も、西成問題は最重要政策の一つと位置づけ、市長就任直後から「西成特区構想」などを打ち出し、対策を図ってきた。
その橋下市長率いる「大阪維新の会」が、国政進出を視野にまとめた政策集「維新八策」の最終案を7月5日に公表した。その中の「社会保障制度改革」で注目されたのが、「現物支給中心の生活保護費」という文言だ。読んで字のごとく、現在は「現金」で支給されている生活保護費を「現物」で支給しようというのだ。
「まだ現実的にどういった形になるかははっきりしませんが、この場合の『現物』とは、食料品や生活必需品などと交換できるクーポン券のようなものになる見込みです。6月に維新幹部が『八策』に盛り込むと語った際には、国民に自立を促すため、としていました」(大阪市政担当記者)
実はこの「現物支給」案、片山氏らが法改正を目指す自民党PTでも同様にうたわれている。同PTでは「手当より仕事を」と、就労を促すことを目的としつつ、5つの柱を掲げる。その一つに、「食費などの生活扶助、住宅扶助を現金給付から現物給付へ」とあるのだ。また、「八策」では「有期制」ともしており、これは給付対象者の審査を一定期間をあけて行うことを意味する。「現物支給」の意義について、片山氏が言う。
「現在の原則、現金支給の中身はどうでしょう。中には旅行などのレジャー、まぁ、これは個人でためたお金だからいいとして、ギャンブルや酒、タバコに費やす人がいることです。こういったものは、自分で稼いでからやるべきです。少なくとも、現物支給にしたら、直接こういった浪費はできなくなります」
が、例えば暴力団関係者など、クーポンを買い取って転売するブローカーが現れる可能性もある。
「そうまでして生活必需品をお金に換え、酒やタバコに費やすような人を国民の血税で養うとしたら、もうそれは国の政策として理解を得るのは難しく、欧米の教会におけるチャリティですよね」(片山氏)
つまりは現物支給にすることで、現金目当ての不正受給が行われなくなると同時に、生活保護受給者には生活に必要なものが行き渡る。「入り口」部分での不正防止という水際作戦なのである。