阪神タイガースのお家芸といえば「内部抗争」である。ところが、この球春に発覚したのは、元監督が師弟関係にあった現監督に激烈な批判を展開するという異常事態。岡田彰布氏が渾身の著書に込めた思いとは何なのか──。背景を探ると、やはり阪神特有の「思惑」が見え隠れするのだった。
〈打線はある程度、確立しないといけない。17年は16年みたいに日替わりとかではアカン。(中略)そもそも100通りも打順を変えて過去に優勝したのは、仰木彬監督のときのオリックスくらいのものだ〉
ふだんの「そらそうやろ」という温和な口調ではなく、冷徹な筆致でモノ申すのは、阪神の元監督・岡田彰布氏(59)だ。05年には就任2年目でチームをリーグ制覇に導いた知将として知られるが、昨年、金本知憲監督(49)が就任すると、一貫して厳しい指摘を重ねている。
「初采配の開幕戦を落とすと、岡田氏は『作戦を見せすぎ。143分の1試合目だから手の内を見せず、堅実な作戦で戦えばいい』と、いきなりダメ出ししていました」(スポーツライター)
そして金本政権2年目の今季、開幕直後の4月10日に発売される岡田氏の著書が「金本・阪神 猛虎復活の処方箋」(宝島社新書)。冒頭の「檄文」も同書に収められたものであり、発売に先駆け、その貴重な内容を入手した。
そもそも開幕直後のタイミングで「ダメ出し本」の発売に至った経緯は何か。担当編集者によれば、
「私自身が熱烈な阪神ファンで、沖縄キャンプにも足を運びましたが、金本阪神になってから『組織としてマズい状態にある』と感じるようになりました。何百人もの経営者をインタビューした経験から、タイガースはしばらく低迷期に入ると確信しました」
そこで、阪神を内外部から熟知し、優勝経験もある岡田氏に依頼すれば「問題点」があぶり出せると考えたという。さらに同書は発売直前にタイトルが変わったことで、一部の阪神ファンの間では騒然となった。
〈金本阪神タイガースに未来はない〉
これ以上ない過激なタイトルだが、変更の理由を先の担当編集者が明かす。
「記事の見出しなら『金本阪神タイガースに未来はない』が強くていいと思いますが、タイガースを愛する人に向けてなら‥‥と最終的に判断しました」
書名はマイルドになっても岡田氏の舌鋒は鋭い。第1章から「金本・阪神のここがダメ」と斬り捨てる。まず俎上に載せたのはオリックスからFA移籍した糸井嘉男(35)の起用に関してだった。昨年の盗塁王タイトルは、パ・リーグだから獲ることができた、と断じるのだ。
〈53盗塁がチームの勝ちにつながったかといえば、結果が最下位なんやから、必ずしもつながったとは言えないだろう。(中略)オリックスの監督のときに見た糸井(注・当時は日本ハム)には『ここで走られたら嫌だなあ』という場面で走られたという印象はない〉
結果的に開幕戦は3番で出場したが、金本監督が盗塁王のイメージで「1番・糸井」にこだわりを見せていたことへの苦言である。