実は就任後の金本監督は、スポーツ紙などで岡田氏が何を語っているか全てチェックしているという。間もなく発売になる著書も目にするだろうが、こんな痛烈なメッセージもある。
〈金本知憲監督が、「打撃が同じくらいなら、ショートは鳥谷ではなく、北條を使う」とインタビューで答えていた。そりゃあそうだ。いまの感覚、使い方ならそうだろう。ただ、わたしが言いたいのは、どっちを使うのがいいとか悪いとかじゃない。勝つために何をやるか、ということよ〉
表紙の帯でも大きく〈北條は二塁、ショートは鳥谷。選手をすぐ代えるな!〉の文言で喝を食らわせているが、実は昨季、鳥谷敬(35)を遊撃から外して三塁に置いたことがあった。この点こそ、岡田氏にとって許しがたいことのようだ。
〈金本監督が選手にいろいろ配慮しているのは聞いている。特にベテランに対しては、対話して気持ちを確かめたりしている。(中略)ただ鳥谷がこう言うからとか、福留もファーストで使いたいと考えていたのに本人に断られたとか、選手が納得しないからとかいうのは、それは監督としておかしいやろ。ちょっと感覚が、違うなあ。ベストメンバーとは、相手に勝つために選ぶ選手なのだ〉
もっともな「監督論」であるが、それにしても、師弟関係の愛のムチにしては厳しすぎる声を連発するようになったのには、どんな事情があるのか。コトは14年、和田豊監督時代に遡る。
「和田監督の後任には、岡田氏の再登板がほぼ決まっていた。ところがその年、和田監督はCSで巨人を破って初めて日本シリーズに出場したため、構想は1年先送りになった」(球団関係者)
岡田氏も意欲を見せ、バッテリーコーチに西山秀二氏、投手コーチに中田良弘氏、金石昭人氏などを組閣し、声もかけていたという。球団関係者が続ける。
「さらに、当時の南信男球団社長から『いずれ監督にするために、金本をヘッドコーチで入閣させてほしい』との要望があった。ところが、金本監督の態度が『ユニホームを着る自信がない』『監督ならやるかも』などと変わり、結果的に金本監督という逆転起用になったんです」
当然、岡田氏は「話が違う」と不快感を表し、南社長は混乱の責任を取って、金本監督誕生後に辞任した。
「今回のダメ出し本の出版には、金本監督への複雑な思いが入っているように思えるし、さらに『金本の次はやっぱりオレ』というアピール含みでしょう」(スポーツライター)
今季、阪神の優勝を予想する評論家がほとんどいないのは、岡田氏にとって、ある種の「思惑どおり」だろうか──。