解散が決まる前から永田町はすっかり“選挙モード”。民主も自民も党首選で次の総理を選び出すというのだが、手をあげるのは見飽きたメンツばかり‥‥。国民が「本当に総理になってほしい」と願うのは、やはりこの2人だ。本誌はプロの稼業人と政治のプロに、どちらが「トップの器量」の持ち主なのかを聞いた。真の“俠”はいったいどちらだ!
今や政治を扱うニュースで、橋下徹大阪市長(43)を見ない日はない。
国政進出を目指す「大阪維新の会」には、次の選挙を見据えて国会議員が「踏み絵」を踏む覚悟で殺到中。政党化の目星もついている。橋下氏の最重要課題である「大阪都構想」でも、実現に必要な法案が国会で成立。国政を牛耳らんばかりの勢いなのだ。
しかし、橋下氏自身は衆院選出馬を否定している。市長のままでは、総理になれないというのに‥‥。
一方、小泉純一郎元総理(70)を父に持つ政界のサラブレッド、自民党の小泉進次郎衆院議員(31)の人気も高まっている。
09年の総選挙で初当選した直後から、その端正なルックスで世の女性たちをトリコにした。また、父親譲りの演説のうまさが評判となり、党の遊説局長代理に就任。さらには、遊説局長を歴任後、昨年10月には青年局長に抜擢された。これは、父親のような“変人”ではない実直な人柄が認められてのことである。青年局長は安倍晋三氏(57)や麻生太郎氏(71)という歴代総理が通った登竜門。今年4月には、早くも青年局の会合で、「総裁選へ立候補して」という声も上がった。
ところが、今のところ9月26日に投開票される自民党総裁選の候補者に進次郎氏の名前はない。今、総選挙が行われれば、自民党が第一党となることが確実視されている。自民党総裁は総理を意味するのに‥‥。
両者ともに次の総理になる気はないようなのだ。それでも、両者が近い将来、総理の座を巡り雌雄を決することになるのは衆目の一致するところだ。
はたしてこの2人が、本当に「総理の器量」の持ち主なのか、本誌は“俠”の世界に生きる人々に聞いてみた。
関西地方の60代のベテラン組長はこう話す。
「橋下はヤクザの息子、進次郎の曽祖父は『刺青大臣』と呼ばれた政治家や。どちらも“任俠のDNA”を受け継いでおるわけやから、現実に総理の椅子を争うとなったら、ワシらにとってもうれしい話や。でもな、現在の2人を比べろと言われたら、進次郎にはちょっと酷なんと違うか」
酸いも甘いもかみ分けてきたベテラン組長だけに、やはり両者の性格の違いは一目瞭然のようだ。
「橋下いう男は、何をやるにもインパクトがある。日教組を黙らせて、公務員に君が代斉唱を義務づけた政治家は他におらん。国会議員がすり寄ってきても、維新八策をのむと公開討論会で表明せな同志とは認めんと言いよる。もう、人間の業とは思えん。エゲつなさは、ヤクザ以上やで。そこへいくと、進次郎はまだ幹部候補生やな。ホンマは尖閣問題で、どこかの都知事みたいな老人やのうて、こういう若い連中が中国にガツンと言ってほしい。進次郎は無派閥とはいえ、岸信介の流れをくむ自民党最右翼の政治家や。アメリカには従属かもしれんが、反中国は一貫しとるはずや。これからに期待やな」
本当の器量は修羅場でわかる
また、関東の武闘派組織の元構成員で、作家の中野ジロー氏もこう評する。
「ヤクザが入れる刺青というのは、少なくとも昭和までは日本の文化だった。それを、ヤクザの息子である橋下さんが否定するのは、刺青を入れている私からすると、いかがなものかと思う。反面、それだけハッキリ物事を言うということにおいては、橋下さんは親分とか総理の器なのかもしれません。それに、ヤクザの親分となれば、女にモテなきゃいけない。進次郎さんもモテそうだが、不倫してまでオンナがいたという点で橋下さんがリードしている。やはり、進次郎さんは親分、いや若い衆にすらなっていない。私にはボンボンにしか映らないんです」
一度でも渡世に身を置いた人間にしてみると、橋下氏の政敵に見せる獰猛さは魅力的なようだ。やはり、カリスマ性では橋下氏が上のようだ。しかし、関東の老舗組織傘下で組織を構える30代の若手組長は、違う視点で両者を見ていた。
「橋下氏は頭がいいんでしょうが、先を見越して行動しているように見える。論争するにしても、最初からケンカの相手との妥協点を決めてから始めているのではないか。我々の世界では、そういう謀事が上手な人間というのは、決してホメられない。もちろん、政治の世界は謀事が上手な人間が上へ行く世界なのかもしれないが、小泉氏のほうが誠実で男らしいだけに、私は応援したいですね」
自民党という巨大組織で出世していく進次郎氏。その姿と自身を若手組長はダブらせているわけではない、と言う。支持する理由は彼の政治姿勢である。
「我々の稼業のトップは、ほんの少しでもブレてしまっては終わりです。橋下氏は、大飯原発再稼働問題では『民主党を解体する』とまで言っておきながら、一転して再稼働を容認した。一般の社会では許容されるブレかもしれないが、一国の総理としては許されないでしょう。その点、進次郎氏は父親が成し遂げた郵政民営化を差し戻す法案に、党の方針に逆らってまで反対した。我々の世界に世襲はないけれど、あの腹の据わり方は見習いたい」
進次郎氏が見せた父親への尊敬の念に、ヤクザは政治家の胆力を見たのだ。
一方、どちらも「トップの器にあらず」という意見もあった。北関東で活動する40代の組長である。
「親分の器というのは、やはり修羅場での対応でわかるもの。橋下も進次郎も政治的な修羅場はまだ迎えていないから、器量は判断できない。ただ、両者ともこっちの世界で、体を賭けてこいと言われたら、逃げてしまう目をしているね。ケンカや掛け合いでの一瞬の相手の洞察と決断、瞬発力とでも言うのかな、それが親分の器量を計るうえでは重要。一般社会でも通用する理屈だと思うけどね」
進次郎氏は個別取材を受けないが、国会内での囲み取材には応じている。その理由を周囲に、「言葉の瞬発力を鍛えるため」と話している。一方、橋下氏もツイッターでつぶやき、一般人との論争を展開している。きたるべき「修羅場」を控えて、両者とも牙を研いでいるということだろう。