「結果にコミットする」をコンセプトとするCMが注目を集めています。先月は松村邦洋さんが30キロのダイエットに成功。これまでにも石田えりさん、エド・はるみさん、井上公造さん、森永卓郎さん、峯岸みなみさんなど数多くの芸能人や文化人が、スッキリとしたボディを披露しています。
医師の目から見ても短期間で結果を出すために、マンツーマンで厳しく管理、「科学的根拠」のあるトレーニング、栄養管理士による食事指導など、ダイエット法としてもよく考えられています。一人だと「もう限界だ」と早々にあきらめてしまうトレーニングも、「まだいける!」とトレーナーに励まされると、最後の力を振りしぼることができます。この「最後の力」が短期間でも続けば、ダイエット効果を発揮するわけで、こうしたトレーニングが徹底されています。
そしてもう一つの痩せる理由にあげられるのは「高額」があります。入会金や月会費を合わせて、給料の2~3カ月分を支払うため「元を取ろう」という意識が働くわけです。
実際、お金がかかると人間は痩せられるもので、例えば映画の役作りで20キロしぼるとなれば、高額なギャラが支払われるため役者さんは減量します。
私の患者さんが、料金を支払う形のダイエット法にチャレンジして失敗した、とこぼしていました。聞けば、その方は代金を母親に支払ってもらったそうです。やはり、自分で支払わないと「痩せてやる」という覚悟が持てないわけです。
さて、ダイエットの際に心配なのがリバウンドです。痩せて安心したら元に戻ってしまった、というリバウンドを防止するためには、糖質やアルコールなどの「食事制限」と「トレーニング」のどちらを継続するべきでしょう。
食事制限の場合、1~2カ月は我慢できても1年間となると、なかなか難しいものです。年末年始や正月などつきあいの多い時期、あるいは誕生日会や同窓会、友人との食事などのたびに「挫折」しなければなりません。一度食べたら食欲が出てしまい、気づいたら元に戻っていた、では元の木阿弥です。
ダイエット中は体重を計る楽しみから続けられますが、体脂肪を落としきると、逆に落ちにくくなります。「現状維持のための体重制限」は頑張ってプラスマイナスゼロで、ご褒美がないのです。
しかも、今のテレビは食べ物番組であふれており、番組を観ただけで食欲が増してしまう、そんなつらさにも耐えねばなりません。
もし食事制限を続けるなら、糖質は1日1食にするなど、ゆったりした制限を続けることです。糖質ゼロのような食事制限を、長期にわたって続けるのはかくも難しいものです。
対してトレーニングの場合、続けていくとある時点から「つらさ」が「快感」に変わっていきます。ランニングで長時間走り続けると、気分が高まりランナーズハイとなります。これは、体のつらさを「エンドルフィン」という脳内麻薬が出ることでカバーしてくれるのです。一度ランナーズハイを経験すると、走ることが快感となり、悪天候などで走れないだけで体調が悪くなったりします。つまり、トレーニングは続けるほど中毒性を感じてくるため、続けやすいという特徴があります。
ちなみにベストのトレーニング法は、無理のないペースでのジョギングや、浮力で足腰への負担が少ない水泳です。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。