テリー 以前に何かのインタビューで読んだんですけど、坂上さんのそういう度胸の据わり方って、勝新(太郎)さんの影響も大きいんですか?
坂上 いや、影響を受けたというより、かわいがっていただいたんです。僕が7、8歳ぐらいの時に「座頭市」のテレビシリーズにゲストで出させていただいて、その時「今までに見た役者さんとちょっと違うなぁ」って思ったんですよ。
テリー 例えば、どういうところがですか?
坂上 よく覚えているのが、勝さんが僕を悪人から守るシーン。殺陣師の方が段取りを説明して「じゃあ勝さん、お願いします」って言ったら、全然そのとおりにやらない(笑)。「ここをこうして、ああやって」って、全部、自分で変えちゃうんです。
テリー ハハハ、すごい。
坂上 それからだいぶたって、勝さんがコカイン所持で捕まって‥‥。
テリー 「俺はもうパンツはかない」って言った。
坂上 そうです、そうです(笑)。たまたま仕事で行ったホテルで勝さんがディナーショーに出演されていたので、ご挨拶しようとドアを開けたら、ホテルの浴衣の裾を白いパンツの中に全部入れて、上半身が茶巾寿司みたいな格好の勝さんが「入ってたんだから、しょうがねえんだよ」って言いながら出てきたんです。
テリー ハハハ! 勝さんいわく「コカインは勝手にパンツに入ってた」んだものね。
坂上 おもしろすぎますよね(笑)。そこから飲みに連れて行っていただくようになったんですが、まぁ、カッコよかったですね。
テリー 他に坂上さんが芸能界で影響を受けた人はいるんですか?
坂上 やっぱり身近なところだと、子役の頃にお父さん役をやっていただいた宇津井健さん、加山雄三さん、石立鉄男さんは三者三様でおもしろかったですね。宇津井さんはストイックの極みで、誰よりもテレビ局のリハーサル室に早く入って、上半身裸でエキスパンダーをやっているんですよ。胸筋ムキムキでしたから。
テリー 宇津井さんは、最後の最後まで“宇津井健”でしたね。
坂上 いや、本当に。ホームドラマ全盛の時だったので、食事のシーンが必ずあったんですが、宇津井さんだけは太らないよう、お米を大根おろしに変えていましたからね。
テリー へぇ~、それは知らなかった。
坂上 一方、加山さんは語学が堪能で遊び好き。当時日本では売っていない、スケボーにエンジンが付いたものをアメリカで手に入れて、僕と一緒に遊んでくれていました。そんなことをしている間に出番が来たんですが、スタッフは加山さんが怖くて呼べなくて。結局、収録が押しちゃって、加山さんじゃなくて僕が怒られたんですよ。「不条理な世界だな」と思いました(笑)。あと、石立鉄男さんは、いちばん肌が合った方ですね。
テリー それはまた、なんで?
坂上 一緒にトランプゲームをしたんですけど、最初に「お前、いくら持ってる?」って言われたんですよ。子供だから数百円しか持ってないんですけど、次に「いくら賭ける?」って言われまして。
テリー すごいな、子供相手に(笑)。
坂上 しかも実際に遊んでみると、全部イカサマだったらしくて、すっかり巻き上げられちゃって。最終的にお金は返してくれたんですけど「この人、鬼だな」って(笑)。まあ、そんなことも含めて、いろんなことを石立さんから学びましたね。