テリー 僕は築地生まれですからお寿司が好きなんですけど、業界的にはどんな感じですか?
木村 おかげさまで空前のブームです。15年前には、海外に寿司やしょうゆを扱う店は2600店舗しかなかったんですよ。ところが、今では20万店舗を超えるとも言われています。話によると、キッコーマンさんのしょうゆは、3分の2が海外での利益らしいです。
テリー それだけ世界にお寿司が広がっているという証拠ですね。しかし、気になっていることがあって、築地だとほとんどのお客さんが海鮮丼を食べているじゃないですか? ちょっと流れが変わってきている印象があるんですけど。
木村 それでもいいと思いますけどね。そもそも、築地で漬け丼をはやらせたのは私ですから(笑)。
テリー えっ、そうなの?
木村 昔、マグロがキロ250円でも売れないぐらい安い時代に、「何とかマグロをブームにしてくれないか」と相談されましてね。それで始めたのが、マグロの漬け丼なんです。当時、漬けの握りはありましたけど丼はなかったですし、食べるのも手間いらずですから、2時間で500~600食売れてたんですよ。
テリー へぇ、さすがのアイデアマンだ。でも、僕はやっぱりお寿司が好きだから「丼物よりもにぎりのほうがおいしい」と言い続けているんですよ。
木村 それはそうだと思います。丼を否定するつもりはありませんが、やっぱり寿司は握った時に味が違ってきますからね。酢飯とネタが合致した時に独特のうまさがワッと出るんです。それをお客さんに理解していただければ、寿司に戻ってきてくれると思います。
テリー 僕、大学に通っていることもあって、学生と一緒に回転寿司に行くことがあるんですよ。今はメニューも多岐にわたっていてラーメンやケーキまで出てくるじゃないですか。ああいう遊園地みたいなお寿司屋さんの方向性に関しては、どう思われています?
木村 お客さんに喜んでいただけるのなら、あれはあれで、私はいいと思っているんです。だって、あの回転レーンも、昔は寿司を回すためのものじゃなかったですからね。
テリー え、そうなんですか?
木村 あれは、大阪の食堂でおかずを乗せて回していたのが始まりなんですよ。(東京の)勝どきにも「月よし」という食堂があって、1皿100円、200円のおかずを出していたけども、ご存じじゃないですか。
テリー ありましたねぇ! 納豆や冷や奴なんかが出ていました。
木村 そうすると、あれもこれも食べたくなって、1皿は安いけど結局1000円以上食べてしまう。そういう人の習性を利用して、寿司を回すようになったんだと、昔、聞いたことがあるんですけどね。
テリー なるほど。じゃあ、進化していくのは当たり前だと。
木村 ええ、いろいろな形で寿司を楽しんでいただけるのなら、私はそれでいいと思います。
テリー では、今後お寿司をさらに盛り上げるため、木村社長はどんなことをやっていこうとお考えでしょうか。
木村 若い職人さんをしっかり養成して、ますます手握りの寿司の魅力を広げていきたいですね。これぞ日本の味というものが伝われば、お客さんは必ずついて来てくれると思うんです。