業績の低迷するフジテレビが、50歳以上の社員を対象に退職金を最大で7000万円優遇する早期退職優遇制度に踏み切るという。さらに一部報道によると今年度の内定者から辞退者も続出しているとか。数ある大企業の中でも最も狭き門と言われるテレビ局の就職試験を勝ち抜いたにも関わらず、なぜ内定を蹴るのか。テレビ局事情に詳しいライターがささやく。
「なぜテレビ局が魅力的な就職先だったのか。もちろんメディアに関わる仕事であることは大きな理由ですが、それ以上に学生を惹きつけていたのは、全業界を通してみても突出した高水準の給与にあったはずです。テレビ業界は国の免許制度で守られており、その給与は高値安定。銀行や自動車メーカーですら合併や買収で消滅する中、テレビ業界では1994年の近畿放送(現KBS京都)を除いて倒産した例はありません。しかし近年はネットの普及に伴う“放送と通信の融合”により、テレビ局の存在感が大幅に低下。フジテレビが赤字に転落したことで、『テレビ局の高給もそう長くは続かない』と思われるようになったのでしょう」
ただテレビの衰退が叫ばれつつも、メディア別の広告費を見るとテレビ広告は復活しているとのデータもある。確かにネット広告の伸びは大きいものの、短中期的にはテレビ局がすぐに斜陽化するとは言い難い。だが時代の流れに敏感な若者たちは、別の面にも注目しているという。
「テレビ局を志望する学生のほとんどは番組制作が目的。ドラマやバラエティ、音楽番組などの制作に関わりたいと思っています。ところが最近、テレビ局の収益構造は多角化しており、イベントやゲーム、既存コンテンツの権利処理といった部署が増えています。それならまだ番組と関わることもできますが、不動産となると話は別。実は多くのテレビ局では不動産資産を活用しての収益ビジネスを推進しているのです。そのため『不動産をやりたくてテレビ局に入るのではない』として、内定を辞退する例もあるのではないでしょうか」(前出・ライター)
たとえばフジテレビ本社に隣接する東京・台場のダイバーシティ東京は、三井不動産と大和ハウス工業、そしてフジサンケイグループのサンケイビルによる合弁事業であり、フジテレビがイベントプロデューサーとして参画している。オフィスタワーには子会社である共同テレビジョンの本社が入居するほか、フジテレビの一部部署や番組制作ルームが置かれており、フジテレビ社員も数多く働いているのである。
ただ、不動産で稼いでいるのはフジテレビばかりではない。TBSが赤坂サカスから多額の収益をあげているほか、日本テレビではかつて本社が置かれていた麹町の土地を買い集めており、再開発の真っ最中。実はテレビ局にとって不動産開発はホットな事業なのである。どんな会社でも稼いでいる部署は花形になるもの。そのうち、不動産会社とテレビ局を併願する学生も出てきそうだ。
(金田麻有)