テリー ボクシングだと、チャンピオンになるまで収入的には苦しかったんじゃないですか。
山中 はい、やはりアルバイトはしないといけませんでした。いちばん長かったのは、新宿のラーメン屋さんですね。学生の頃から期待されていれば、スポンサーが付いたり、ジムからの契約金があったりしたんでしょうが、さっき話したとおり、僕は大学で成績を残せなかったので、夕方までアルバイトをしたあと練習に行くという生活を、日本チャンピオンになるまで、ずっと続けていましたね。
テリー 日本チャンピオンになったのは‥‥。
山中 27歳の時です。大学を卒業してからそこまでの5年間が、いちばんきつかったです。
テリー 山中さんは奥さんがすごい美人で、何かと話題にもなっていますが、2人の出会いはいつ頃だったんですか?
山中 彼女とは、日本チャンピオン初防衛の祝勝会で、初めて会ったんですよ。当時、僕の姉の家族が東京に住んでいて、旦那さんがスペイン料理のお店をやっていたんです。妻は、そこで働いているバイトの子の友達でした。
テリー そうでしたか。やっぱり、恋愛も軽いジャブから入っていったんですか?
山中 いや、そこでは意外としっかりと踏み込んで、狙っていきました(笑)。
テリー 最初からノックアウト狙いですか。何回ぐらいで倒せたんですか?
山中 2ラウンドKOですかね(笑)。お互い、最初からすごくフィーリングが合ったんですよ。それでデートを重ねて、結婚したのは世界チャンピオンになったあとです。
テリー やっぱりそこでは口説くために「絶対、世界を獲るから」みたいな夢を語ったんですか?
山中 いや、そういう話はしなかったですね。日本チャンピオンになったら次に目指すのは世界ですし、僕としては、もう「(チャンピオンに)なって当たり前」みたいな感覚だったので。
テリー とはいえ、さっきの話のように、日本チャンピオンでも収入的には厳しいわけじゃないですか。ボクサーとしての純粋な収入はファイトマネーだけだと思うんですけれど、それだって年に何試合もやれないですよね?
山中 多くて3試合ぐらいでしょうか。
テリー 1試合いくらもらえるものなんですか?
山中 ジムにもよると思いますけれど、数十万円です。日本チャンピオンで、100万円もらえる人はいないと思います。
テリー そうすると、多くても年間300万円。世界チャンピオンになると、やっぱり防衛を重ねるたびに上がっていくんですか?
山中 具体的な額は言えないですけれど(笑)、もちろん世界を獲ると、それまでとは全然違います。
テリー 12回も防衛したんですから、これはかなりの貯金額じゃないですか?
山中 アハハハ、そうですね。うちのジムは、たぶん日本でいちばんお金を出してくれるところなので、そこに関してはありがたかったですね。
テリー じゃあ、貧しい時代を共にした奥さんもさぞ喜んでいるでしょう。
山中 おっしゃるとおりで、一人暮らしをしていた時はバイトが忙しいこともあって、ひどい食生活だったんです。でも、結婚してからは妻が食事に気を遣ってくれたおかげで、体調管理をする余裕もできました。恐らく妻がいなかったら、ここまで長く世界チャンピオンでいられなかったと思いますね。