大谷が故障した原因は何だったのか。「メジャーの流儀」(大和書房)をはじめ、多くの大リーグ関連著書があるスポーツジャーナリストの古内義明氏は「球団としては『ついにこの日が来たか』という心境でしょう」と前置きしてこう続ける。
「大谷は中学時代から硬式球を投げ、高校時代もトーナメント形式の試合で肩と肘を酷使してきた。それゆえ、エンゼルス入団時にも勤続疲労を懸念する声が多かったのは事実です」
日本ハム時代にグレード1(腱が伸びている状態)の故障を経験しているだけに、「いずれはこうなる」との見方もあったという。
「ただ、開幕からたった2カ月余りで“壊れる”というのは想定外だったのではないでしょうか。エンゼルスは5~6年という長いスパンで大谷をエース兼クリーンアップに育てようとしていましたから。いずれにしても今回の故障で、大谷だけでなくチーム全体の編成を見直す必要に迫られました」(古内氏)
MLBジャーナリストのAKI猪瀬氏は、ボールの質に原因があったのでは、と指摘する。
「大リーグの使用球は日本に比べて重く、滑りやすい。そのため日本から移籍した選手は投手、野手にかかわらず、投げる瞬間に滑らないよう力を入れる。それが肘への負担につながったと考えられます」
大谷が投げる鋭い変化球も、少なからず影響しているようだ。猪瀬氏が続ける。
「日本ではスプリットの多投が原因だという報道が多いですが、その見立ては80年代に言われたもの。現在の米球界では、スプリットよりも、指先で強く切るスライダーのほうが肘への負担が大きいというのが定説です。大谷もスライダーをよく使う投手なので、そちらが影響したと考えるのが自然です」
これまで、大リーグに移籍した多くの日本人投手が、マウンドの硬さやボールの違いなどに苦しめられてきた。大谷はうまく順応して結果を残してきたが、中指にマメができるなど、小さな綻びは見え隠れしていた。これらの綻びが蓄積して、今回の大きな故障につながったという見方もされている。
いずれにせよ、気になるのは復帰の時期と可能性ということになってくる。当初の報道では、最悪の場合、ダルビッシュ有(31)、松坂大輔(37)=現中日=、和田毅(37)=現ソフトバンク=、藤川球児(37)=現阪神=らが受けた靱帯の修復(トミー・ジョン)手術に踏み切る可能性も指摘されていた。そうなると復帰までには1年半以上かかることになる。
「手術するか否かは再検査の結果が出てからの判断になると思いますが、その時のチームの順位や先発投手陣の状況も考慮されると思います。現在、エンゼルスはア・リーグ西地区でワイルドカード争いを繰り広げています。大谷に多少無理をしてもらって、だましだまし投げてもらうのか。将来のために早期の手術を勧めるのか。いずれにしても苦しい決断を強いられることになります」(古内氏)