「ショーヘイ・オータニはこの惑星の生まれではない」と、米メディアは宇宙人レベルの大活躍ぶりを称賛。開幕10戦で2勝3本塁打と、早くも「二刀流」の成功を約束する「SHO-TIME」に全米が熱狂している。ところが、スーパースターはこの先も「超お買い得マイナー契約」にがんじがらめとなるようだ。
4月9日、対アスレチックス戦で毎回連続の12奪三振、7回一死まで完全試合の快投を演じたエンゼルス・大谷翔平(23)は、米メディアからこぞって称賛の嵐で迎えられた。開幕10戦で、投手としてはこの“準完全試合”を含む2勝、打者としても3試合連続ホームランなどの大活躍で日本人メジャー選手最速となる週間MVPを獲得している。
もっとも、開幕前は米メディアの大谷評も「高校生レベルの打撃」「マイナーからスタートすべき」といった辛辣な論調が多く、とんだ風見鶏ぶりだ。現地で取材するジャーナリストが語る。
「開幕前に『二刀流など通用するわけがない』と酷評していた記者が『翔平さん、ごめんなさい。私が完全に間違えていました』と異例の謝罪記事を掲載したほどです」
まだ始まったばかりとはいえ、大争奪戦を制して大谷を獲得したエンゼルスは笑いが止まらないだろう。
そもそも「カネよりも夢を選んだ」と称賛された大谷だが、25歳以下でのポスティング入団は「マイナー契約」スタートで、球団は若きスターに最低保証額しか支払わなくて済むのだ。
「かねてからメジャー挑戦を熱望していた大谷を意識したのか、昨冬から導入されたこの“大谷ルール”により、今季の大谷はたとえメジャーで大活躍しても、昨年の推定年俸2億7000万円を大きく下回る最低保証額54万5000ドル(約6000万円)しか得られません。エンゼルスはルール上、6年間は条件のいい金額で保有権を持つことができる。この契約が決また時から現地では、どれだけ働いても金額が変わらず、ケガをしてもマイナーに放置する余裕がある“奴隷契約”と陰口を叩かれていた。あと2年待って25歳になってからメジャーに挑戦すれば最大で『総額2700万ドル(約30億円)』契約と言われていたのにですよ」(前出・現地ジャーナリスト)
この“奴隷契約”について、米球界に詳しいスポーツライターの友成那智氏が説明する。
「現地で『史上最大のバーゲンセール』と報じられたように、この契約により大谷は3年目までは最低保証額でプレーすることになります。これは、MVPやサイ・ヤング賞を獲っても変わることはない。ちなみに、サイ・ヤング賞を3度受賞しているドジャースのクレイトン・カーショー(30)も、かつて最低年俸でプレーしている。4年目からは年俸調停権を得られますが、FAほど金額は跳ね上がりません。例えば4年目で700万ドル(約7億円)、5年目で1500万ドル(約16億円)、6年目で2000万ドル(約22億円)と徐々に上がる仕組みです。ようやくFA権を行使して本来の評価どおりに複数年200億円クラスの契約を勝ち取るためには7年目まで待たなければなりません」
14年に7年161億円でヤンキース入りしたマー君と比較するまでもないたかが知れた金額で、大谷は全米を熱狂。それでも、アメリカンドリームをつかみ取る前に、故障などで選手生命を終わらせかねない保障は何一つないのだ。