「西野マジック」炸裂で、日本代表は2大会ぶり決勝トーナメント進出! 列島が歓喜に沸く中、ピッチ外でも涙なしには語れないドラマが起きていた。悩める「10番」を長友がV字復活させ、猛バッシングの守護神には「不仲」の本田が身代わりフォロー。感涙秘話をハットトリックてんこ盛りでお届けしよう!
ポーランドとの試合で1点を追いかける日本はディフェンスラインでボールを回し続け、スタンドから大きなブーイングが鳴り響いた。同時間帯で行われているセネガル対コロンビア戦で、セネガルが同点に追いつけば日本の予選敗退が決まる。紙一重の展開で西野朗監督(63)は、大博打の「時間稼ぎ」を選択したのだ。
ロシアW杯の約2カ月前に就任した指揮官は、J1歴代最多の270勝を積み上げたが、3年近く現場から離れていた。腕がサビついていることも懸念される中、1次リーグでは采配が的中。ハリルホジッチ前監督(66)が崩壊させた日本をどう立て直したのか──。サッカーライターの渡辺達也氏が説明する。
「チームを作る時間がないと言われていますが、サッカー協会の技術委員長の時から監督目線で見ていた。ハリルを反面教師にして、規制で縛りつけるのではなく、大会中に外出を許可したり、選手を大人として扱っています。会見でもハリルは選手批判をしていましたが、西野監督は自分の発言が選手にも届くことはわかっているので、テストマッチで負けても前向きな発言を繰り返していました」
ピッチ上やミーティングで選手との「対話」を重視して、信頼関係を築き上げたが、Jリーグの監督時代は正反対の指導方法だったようだ。スポーツライターの栗原正夫氏が語る。
「ガンバ大阪やアトランタ五輪時代の西野監督を知る選手は、別の印象を持っています。選手と距離を置くし、正直、選手の声を聞き入れてくれるイメージはないと。それに、理由は練習への遅刻だったり戦術などへの不満を口にしたりとさまざまですが、干された選手も少なくない。懐の深さはありますが、本当にキレたら許さないタイプです」
指導方針は変わっても、いざ試合が始まれば勝負師の血は騒ぐようだ。セネガル戦の相手フリーキックでは、ディフェンスラインを一斉に上げて「オフサイドトラップ」を仕掛けて、世界を驚かせた。
「失敗した時に失点のリスクが高いので、最近では見かけない時代錯誤の罠。それでも相手を攪乱させるために用意していたのでしょう」(渡辺氏)
この奇策は選手の間でも意見が割れていた。スポーツ紙記者が明かす。
「試合後にMF長谷部誠(34)が明かしたことには、本当は初戦でオフサイドトラップをする予定だったのに、何人かの選手がビビッてやらなかったそうです。それに西野監督は納得いかず、2試合目で必ず実行するように指示を出していました」
西野監督の勝利にこだわる強い姿勢に心を打たれ、チームはまとまっていく。そうした勝負の舞台裏には、ひそかに日本代表選手たちの「泣ける話」が積み重ねられていた。