W杯で快進撃するためには、MF香川真司(29)の復活が喫緊の課題だった。背番号「10」のプレッシャーに押し潰されて、前回大会は無得点でチームに貢献できず涙を飲んでいる。リベンジを誓って4年間をサッカーにささげ、自宅のベランダに人工芝を張ってドリブル練習や体幹トレーニング。食事は専属シェフを雇い、酸素カプセルも設置して体のケアを怠らなかった。それでも‥‥。
「ハリル体制では落選危機でメンタルはボロボロ。西野体制になって拾われましたが、ベンチ候補で出場は危ぶまれていた」(スポーツ紙記者)
代表合宿先で香川の「異変」に気づいたのは、DF長友佑都(31)だった。
「シーズン中はケガも長引いていたので、香川にいつもの明るさはなかった。すると長友は練習中から積極的に声をかけたり、与えられた自由時間で、一緒にドライブに出かけてリフレッシュさせていました」(サッカーライター)
長友の献身的な「看護」でV字回復した香川は、本番前のパラグアイとのテストマッチでゴールを決めて、本田からトップ下の座を奪還。コロンビア戦では先制ゴールも奪った。その日の夜、香川と長友はベースキャンプ地の宿舎にあるプールで、「海パン面談」を行っている。
「2人で勝利をかみしめたあと、これで終わりではないと、2戦目に向けて気合いを入れ直したそうです。そして、4年前の出来事も振り返っていたとか。前回大会の時に活躍できずに香川が落ち込んでいると、当時のFW大久保嘉人(36)から風呂場に呼び出され、『全然ダメだったな。落ち込むなよ』と愛ある説教を食らっていたんです。その様子を長友も知っていたので、風呂とプールで場所は違いますが、つかりながらリベンジできたことを喜んだそうです。結果を出してもケアを怠らず、完全に香川を復活させましたね」(スポーツ紙記者)
そんな歴史的勝利を飾ったコロンビア戦の前夜には、もう一つのドラマがあった。
「ベンチスタートが濃厚だった岡崎ですが、練習中の選手たちの雰囲気が気になっていたのか、ホテル内で選手を集めました。そしてみんなの前で、『4年前の悔しさを忘れているんじゃないのか!』と檄を飛ばしたんです。いつもはムードメーカーの岡崎にしては珍しい行動に、選手はあらためて悔しさを思い出したといいます。試合前のミックスゾーン(取材エリア)で長友も『(前回)コロンビアに完敗してピッチに座り込んでいたら、相手選手が慰めてくれた。それがすごい屈辱で、今度は自分が慰めてあげたい』と意気込みを見せていました」(六川氏)
コロンビア戦で試合開始早々に起きたレッドカードとPKは、決して偶然の産物ではなかったようだ。