事件

麻原「遺骨バトル」で「オウム再分裂」の深刻クライシス!(1)麻原と四女の“本当の関係”

 オウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫の死刑が執行されて10日余りが経過した。かつて日本中に憎悪をまき散らした教団トップは死に際して、四女に遺骨を託したという。だが、その遺骨を巡っては水面下で、遺族や後継団体アレフを巻き込み争奪戦が繰り広げられる一方、麻原を狂信する信者が新たな動きを見せているというのだ。

 社会部記者が語る。

「麻原の死刑が執行されたのが、7月6日の午前8時のこと。その1時間前に死刑の執行が言い渡され、それから東京拘置所の地下にある執行室に連れていかれたといいます。最後まで具体的なことはほとんど話さなかったそうですが、死刑執行の7分前には刑務官から『遺品や遺骨の引き渡しはどうするのか?』と尋ねられると、『ちょっと待って』と言いよどみ、そのあとに『誰でもいいから、妻や子供がいるだろう』と促されると、麻原は『遺灰は四女に』という意思を示したと言われています。そして遺言などは遺さずにそのまま執行室に向かったとされています」

 ここにきて、オウム真理教の教祖である麻原彰晃こと松本智津夫の死刑当日の様子が明らかになってきた。当初、意思疎通は十分できず、排泄行為も自身ではできないほどと言われていたが、実際にはしっかりした足取りで、執行室まで歩いていったばかりか、刑務官と会話まで交わしていたのだ。

 しかもこれまで、死後に神格化が懸念されていた麻原の遺骨について、絶縁状態にあった四女が受け取るよう指名されていたことが、法務省より明らかにされた。このことで、麻原の遺族間で、遺骨を巡る争奪戦が勃発していることも表面化したのである。司法関係者が明かす。

「四女は一貫して、父親である麻原に対して批判的なスタンスを取り続けてきました。昨年11月には、家族と縁を切るために、麻原と妻の推定相続人から排除することを裁判所が認定するなど、麻原と松本家とは一線を画してきた。ところが、遺骨の受け渡しに指定されたことから、遺族側を代表して三女のアーチャリーが自身のブログで、麻原の意思疎通は難しいとして『特定の人を指定することはあり得ない』と主張。麻原の妻に遺骨の引き渡しを求めることを申し立てて、両者は対立関係にあります」

 これに対し、四女側は遺骨の受け入れを表明。代理人である滝本太郎弁護士のブログ上にメッセージを掲載して、

〈松本元死刑囚の最後の言葉の件につきましては、指名を受けた私自身が大変驚きました。しかし、それは実父の最後のメッセージなのではないかと受け入れることにします〉

 と遺骨を受け取る意向であることを表明している。

 だが、麻原の妻や遺族側は今後、遺骨の引き渡しを求め、裁判などに訴える可能性も示唆している。司法関係者の証言。

「そもそも麻原の遺言は、死刑執行の直前という数名の刑務官しか知りえない、いわばブラックボックスでの意思表示だけに、国家に対する不信感の根強い遺族側からすれば承服しがたい。中でも三女はブログで『父が東京拘置所の職員と意思疎通ができなかったという客観的事実からも、作られた話ではないかと感じております』と拘置所側の説明を疑問視しています」

 はたして、麻原は遺言を残したのか。元オウム真理教の信者で、現在は上祐史浩氏が代表を務める「ひかりの輪」の広報担当で、『二十歳からの20年間──“オウムの青春”の魔境を超えて』(三五館)の著者の宗形真紀子氏が明かす。

「四女の著書『私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか』(徳間書店刊)を読むと、彼女が麻原に面会した際、コミュニケーションをとることができ、実父の詐病を疑う記述があります。ひょっとしたら、“グルと弟子”ではなく、単純に“親子”として麻原と接したのは、四女である彼女一人だったのではないでしょうか。弟子に対しては“麻原彰晃”としての自分を見せるしかできず、“松本智津夫”として、家族として、本来の自分でいられる瞬間が四女との面会の時だけだったとしたら‥‥。それから、信者だった私から見ても、幼い四女に対して麻原は『三女よりもステージが高い』と評価していました。麻原は、教団の位階制度では、弟子の中で、麻原の血を引く子女らを、すべての弟子の上の位階である『皇子(こうし)』と定めていましたが、その皇子の中でも、四女は、三女の『正大師』より上の『正報師』と認定していました。位階と麻原の信頼度は比例するので、松本智津夫個人として、四女を一番信頼していたということなのかもしれません。反オウムの立場を明確にしている四女を遺骨の受取人に指定したと聞いて、なぜか妙に納得してしまいました」

 麻原の遺骨を巡る争奪戦はまだまだ予断を許さないようだ。

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