ボヤキのノムさんが猛毒本でほえた! 全て最下位に終わった、自身の阪神監督生活の内幕をバラすと同時に、球団の体質、監督采配、そして選手の能力に至るまでを強烈批判。来季の巻き返しどころか、「暗黒時代」の再来を予告したのである。
〈私は、2001年まで3年間、阪神の監督を務めたことは、自分自身の野球人生において失敗だったと考えている〉
これは、先頃出版された「阪神タイガース暗黒時代再び」(宝島社)の、冒頭の一節。著者は元阪神監督にして、現・楽天名誉監督の野村克也氏(77)である。
85年の日本一以降、03年に星野政権で再び優勝するまでの17年間で10度の最下位に沈んだ、あの「暗黒時代」。3年連続最下位の成績でその一端を担った野村氏が当時を振り返りつつ、近年また低迷が続く阪神の行く末を憂いているのだ。
まず展開されたのは、自身の監督時代の暴露ボヤキ。チームリーダーとして期待をかけた今岡誠を、
〈打つことに関しては天才的だった。だが打つことにしか興味がないように見えた。出塁してもリードさえ取らない〉
リードの意義を説くも、今岡は無視。野村氏はマスコミを通じて批判のコメントを吐いたところ、
〈今岡の不平不満は顔に表れるようになったし、怠慢とみられるようなプレーが増えてきた。(中略)私は今岡を監督室に呼び出した。(中略)「何かオレに不満でもあるのか? あるのなら言ってみろ」。1対1で話をしようと考えた。だが今岡は黙ったままだ〉
外野手と投手の「両刀」プランが話題になった新庄剛志については、意外な秘話を披露している。
〈最初の春のキャンプ、私は彼に尋ねてみた。「お前は何番を打ちたいんだ?」と。新庄は間髪を入れずに「それは4番ですよ」と答えてきた。楽しく気持ちよくプレーしたい。それだけを優先する選手だろうと、ヤクルト監督として新庄を観察してきた私は(中略)だから4番を打たせた〉
補強を巡って、久万俊二郎オーナー(当時)とは、激しいバトルも展開。
〈当時の阪神の編成部は、まったく動いてくれなかった。(中略)2年目の00年夏、あまりに孤立無援の状況となり、久万オーナーに「もう限界です。辞めさせてください」と直談判した〉
引き止めるオーナーに、ならばと野村氏は「エースと4番は育てられない」という持論に基づき、補強を直訴。その時のやり取りがふるっている。〈「じゃあキミは巨人のやっていることが正しいというのかね」「正しいと思いますよ。早くエースと4番を獲ってください」「毎年たくさんの選手を獲っているんだから、キミほどの人なら選手を育てられるだろう!」「なるほど、チームが弱い原因が分かりました。阪神が低迷している原因は、失礼ながら、オーナー、あなたですよ」〉
久万オーナーはこの猛毒口撃に、倒れるのではないかと思うほど、顔を真っ赤にして怒ったという。