サバという字は魚偏に青と書くように、青魚の王様と呼ばれる。その栄養効果は、驚くほど高い。
鈴木准教授が力説するには、
「同じ青魚のアジやサンマに比べても、サバにはDHAやEPAといった不飽和脂肪酸が非常に多く含まれています。これらは血中のコレステロールや中性脂肪を減らして、血液をサラサラにする効果があります。動脈硬化の予防にもいいですね」
血行促進効果で、若返りに役立つ。またビタミンB12を多く含むため、貧血予防にもなる。DHAはボケ防止に効果があり、良質なタンパク質も豊富と、サバはいいことずくめなのだ。
ただし、そのままでは調理しづらい難点もあると、阿古氏は指摘する。
「サバはアシが早くて、傷みやすい。まるごと売られていることが多いので、ワタを取るなどの下処理が必要になります。すぐに捨てられればいいのですが、ゴミ出しの日まで時間がかかるなら、ワタの臭いが出るので冷凍保存するなど手間がかかります」
さて、ここからが本題である。これらの問題点を全てクリアするのが「サバ缶」ということになる。
登場するのは「全日本さば連合会」の広報担当で、「サバジェンヌ」の異名を取る池田陽子さんだ。
「実は缶詰のほうが栄養価は高いんです。切り身であれば捨ててしまう皮や中骨も一緒に入っていて、カルシウムなども摂取できます。そのうえ、ダイエットに効果があるというので、急激に女性の購入者も増えましたね」
何よりも缶詰は長期保存ができるため、特売日などに何缶もまとめて買うことができる。
「すでに加熱済みで骨まで柔らかいので、面倒な下処理はいりません。缶汁には魚本来のうまみ成分が含まれていて、そのままダシとして使えます」(池田さん)
売り上げのトップが逆転した「ツナ缶」との違いは、ツナがフレーク状であることに対し、「サバ缶」は原型に近いという点だろう。
阿古氏が言う。
「フレークではなく、もう少しかたまりで食べたいという時には、サバ缶のほうに手が伸びます。また震災後には復興のシンボルとしてサバ缶が活躍しました。フランス語で『元気?』を意味する『Cava缶』(Cの字は下にセディーユ記号が付く)を岩手県が発売したところ、累計で400万缶を突破するヒット商品になりました」
体だけでなく、震災に沈む被災者の気持ちも元気にした食品なのだ。