アマチュアスポーツ界はどこもパワハラ問題で大揺れだが、新たな第一歩を踏み出したはずの女子レスリング界は、早くも軌道修正を迫られていた。
先日のアジア競技大会で「金メダルなし」のレベルダウンを露呈してしまったからだが、前任の栄和人氏に代わって女子選手をまとめた西口茂樹強化本部長を始め、複数の関係者が衝撃的な言葉を口にしていた。
「栄さんがいた時は最後まで攻めたが…。原因を調べなければいけない」
その言葉通りだとすれば、栄氏の復権も十分に考えられる。
「確かに、吉田沙保里、伊調馨も参加していませんでした。若手が育っていなかったということ。レスリング協会も甘く見ていたところがあったと思います」(体協詰め記者)
9月の理事会では敗因分析もされたそうだが、「早期の復帰は無理」との現実的な結論に至った。告発者の伊調が謝罪を受け入れたのならともかく、両者はまだ面談すらしていない。「もう少し時間が経てば…」と含みのある言い方をする関係者もいたが、急浮上してきたのが吉田沙保里の“兼任監督案”だ。
「吉田は人望もある。攻めるレスリングの栄イズムをいちばん理解しているし、何よりもクリーンイメージなのがいい。東京五輪を現役で迎えたいとする希望もあるようだから、兼任なら引き受けるのではないか」(関係者)
もっとも、至学館大学レスリング部監督の後継者としても打診されたが、こちらは断ったとの情報もある。だが、吉田が決心しなければ、パワハラ問題の関心は体操、ウエイトリフティングに移ったままで、そのドサクサでの栄氏復帰ということもなくはない。吉田にとって「決断の時」がきたようだ。
(スポーツライター・飯山満)