五輪V4の金字塔を打ち立てた女子レスリングの伊調馨(33)。栄和人強化本部長からのパワハラが認定され、20年東京五輪への挑戦が今後の焦点だが、その背後には同じく東京五輪でリベンジをもくろむ吉田沙保里(35)と、長年にわたってアンタッチャブルな関係が続いていたのだ。
「マスコミの中で、二人の犬猿の仲は有名ですよ。12年のロンドン五輪の前、伊調が吉田に対して『(テレビ出演など)競技以外の世界でも活躍されていて、すごいなと思います。私にはまねできない』とホメ殺ししましたが、この頃には両者の対立はもはや収拾がつかないほどになっていた。そもそも素顔を見せず、本音を語らない求道者タイプの伊調に対し、常に天真爛漫な吉田は、性格からして水と油です」
04年のアテネ五輪以前から二人を見続けてきたテレビ局の報道デスクは、こう言ってからさらに続ける。
「お互い、公式な場でのツーショットだったり、大会や受賞式後には相手を称賛するコメントを出しますよ。ただし、練習後の取材やインタビューで、名前を出すことはタブー。特に吉田は伊調の名前を聞いた瞬間からムッとした表情に変わる」
そもそも二人の確執は、02年に伊調が63キロ級に階級を上げた時期から報道陣にも伝わってきたという。いったい二人に何があったのか。レスリング協会関係者が振り返る。
「理由の一つは、伊調姉妹がわが道を行くタイプで、周囲の選手と溶け込まなかったことが大きい。特に、姉の千春は見た目と違い、新宿2丁目界隈に興味を抱くような好奇心旺盛なタイプだった。一方、吉田は常にレスリングの後輩らとカラオケに繰り出すなど四六時中、一緒にいる生活を送っていた。そのうちに妹の馨とも距離を置くようになり、吉田派の後輩も伊調姉妹とあまりスパーリングをしなくなっていった。これが今回のパワハラ騒動の一因でもある」
さらに妹の馨にとって“防波堤”だった伊調の姉・千春が08年北京五輪で銀メダルに終わり、引退すると、吉田が露骨な態度を取り始めたという。スポーツ紙記者によれば、
「新聞記事で伊調を取り上げると、『ここ、間違ってますね』とか、『この話、ウソですよ』とわざわざ指摘して、ビックリさせられたものです(苦笑)」
ここにきて、栄強化本部長に対するセクハラ告発を受けて、吉田を取り巻く環境が一変した。
「吉田は至学館大学の副学長の肩書を持ち、女子日本代表コーチでもあるが、一方、東京五輪でリベンジを目指すか、スポーツキャスターやコメンテーターの道に進むか、決断を迫られていた。ところが、どちらも厳しい状況に追い込まれている。特に一連のパワハラ問題が噴出してからは、テレビ出演を断り続けているだけに、吉田サイドから『なぜ、告発が今だったのか』という疑念だけでなく、『もう顔も見たくない』という声まで聞こえています」(レスリング関係者)
二人とも「東京五輪は白紙」と話すが、その野心はメラメラと燃えているはずだ。