京都といえば、これ。菊花賞が今週のメインで、当方が好きな、思い出深い一戦である。
忘れもしない、こんなことがあった。このGIに馬単が導入された02年、確か1、2頭の枠を巡って抽選対象馬が何頭かいた。木曜日の午後にならないと出走馬と出走枠が確定しないので、正直、抽選馬の取材は確定前までは、おろそかになっていた。その中に勝ったヒシミラクルがいたのである。
きちっとした取材は翌日、つまり金曜日の早朝。GI予想の締め切りである木曜日の段階でヒシミラクルには★印を打った。
が、実際、ヒシミラクルを目の当たりにして、体中に電流が走った。
「勝つのはこの馬で間違いない!」
そう確信したのである。
その旨をデスクに伝え、★を◎印に変えてくれと懇願したものの、冷ややかに「ダメ!」と一蹴。そのツレなかったこと‥‥。
結果は読者もご承知のとおり。10番人気だったヒシミラクルがもののみごとに差し切り勝ちを演じ、2着に16番人気のファストタテヤマが入って、なんと馬単18万2540円の高配当となった。当然、ヒシミラクルを無視するわけにはいかず、当たり馬券を手中にしたが、後ろめたさが尾を引いたものだ。
つまらぬことを振り返ったが、かように不確定要素が多いのがこのレースで、だから菊花賞は好みのGIなのである。
このおもしろみは、やはり長丁場の一戦だからだろう。当方のように古い人間には春の天皇賞と並んで見ていて楽しい競馬だが、同時に穴党として予想に力が入るレースでもある。
前置きが長くなったが、馬単が導入されて以降、これまでの16年間、その馬単の万馬券は7回(馬連では4回)。この間、1、2番人気でのワンツーはわずか1回のみ。1番人気馬は7勝しているが、2番人気での勝ち馬はいないのだ。いかによく荒れるかがおわかりだろう。
で、今回の顔ぶれを見てみる。前哨戦の神戸新聞杯を制したダービー馬ワグネリアンの名はなく、一方のセントライト記念を勝ったジェネラーレウーノ以下、有力候補と見られている馬の中で、全幅の信頼を寄せられるものはいない。今年もまた、ひと波乱ありと見るべきではないか。
ハイレベルの混戦模様だが、穴党として最も期待したいのは、ステイフーリッシュだ。
菊花賞を勝ったオルフェーヴル(11年)、ゴールドシップ(12年)と同じステイゴールド産駒で、母の父がダービー馬キングカメハメハ。祖母の父がスタミナ満点のシルヴァーホークと、3000メートルはドンとこいという血統が、まずいい。
さらに、前走の神戸新聞杯は5着に敗れており、人気薄になることは間違いない。しかも、この負けを気にする必要はない。4カ月ぶりの実戦で、休み明けだったことが敗因だろう。それでも勝ち馬とはコンマ8秒差。十分に挽回可能だ。
実際、この中間は順調そのもの。落ち着き払って好気配で、稽古の動きも実にリズミカルだった。ならば、巻き返しのチャンスがあっていい。
ダービー10着は明らかな2走ボケ(その前走の京都新聞杯快勝による反動)だったが、それでもコンマ6秒差。力量のほどは推して知るべしである。だからこそ、長丁場のここは期待できるのだ。
近親、一族にホークスター(GI3勝)、ブラックホーク(スプリンターズS、安田記念)、ピンクカメオ(NHKマイルC)など活躍馬が多くいる血筋。大一番に強い血統でもある。
春とは比べ物にならないほどたくましくなったのも強調してよく、相性のいい京都が舞台。大きく狙ってみたい。