演歌にとどまらない活動で人気を博してきた坂本冬美(45)。アンケートで8位にランクインし、社会現象にもなった「また君に恋してる」(以下また恋)は、定番として誰からも愛される珠玉の一曲となった。
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「この曲は、もともとビリー・バンバンさんがCMで歌っていた曲で、そのカバーリングとして私にオファーが来たのですが、とても光栄でした。『でもなぜ私を?』という思いはありましたね」
07年にビリー・バンバンの楽曲としてリリースされた「また恋」。すぐに「いいちこ」のCMソングとして広まっていくと同時に、新商品CM展開のために、その歌い手として白羽の矢が立ったのが坂本だった。しかもそのキッカケとなったのは、RCサクセションの忌野清志郎(享年58)との“異色共演”だった。
「以前、忌野清志郎さん、元YMOの細野晴臣さんと一緒にユニット『HIS』を組み、ポップスにもチャレンジしました。そのことがCMプロデューサーの目に留めていただけたようです。最初にお声をかけてくださった清志郎さんには、亡くなった今でも感謝の気持ちでいっぱいです」
演歌だけではなくポップスでも、その圧倒的な歌唱力をいかんなく発揮。「また恋」のヒットは、坂本にとっても新たな境地を開く結果となった。
「その年の秋には大人のラブソングを集めたカバー曲アルバム『Love Songs~また君に恋してる~』(EMIミュージックジャパン)が発売されました。ジャケット写真も、それまでは和服でしたが、レコード会社の社長のアイデアでふだん着のジーンズ姿に‥‥。『皆さんが今まで私に持っているイメージがあるので大丈夫かしら』と思いました」
「また恋」のヒットは坂本に思わぬ“副産物”ももたらした。それ以前は、どちらかというと激しい女心を歌い上げてきた坂本だったが、「また恋」では、それまでの歌唱法とはまったく違う表現力を求められたと言う。
「今までとは違って抑えた歌唱法で、“こぶし”も封印。演歌の“ため”も使わず、とにかく軽く、何度でも聴いていただけるように歌いました」
さらに、原曲はビリー・バンバンの2人によるコーラスが聴きどころだったが、坂本がソロで歌うとなると話は別。歌唱法にもそれ相応のくふうが必要とされたという。
「サビの部分の『また君に~恋してる』ここで一瞬、『今までよりも深く まだ君を~』ここでも軽くブレスを入れて歌うのが、とても難しいんです。でも、皆様がカラオケで歌う場合は、息継ぎを気にせず、リズムを楽しんで歌えばすごくいい雰囲気になると思いますよ」
と歌唱法のワンポイントアドバイス。ぜひ参考にしてほしいところだ。
ちなみに坂本自身、プライベートでも仲のいい演歌仲間とカラオケに行くことがあるという。
「藤あや子さん(51)や天童よしみさん(55)と食事も兼ねてカラオケにも行きますよ。あや子さんと一緒の時は彼女のお孫さんも一緒。だから、カラオケは、ほとんどお孫ちゃんの独壇場(笑)。私は天童さんの『大ちゃん数え唄』を歌ったり、藤さんとデュエットでこまどり姉妹の『ソーラン渡り鳥』を歌ったりします」
藤あや子との生デュエットなら演歌ファンならずともぜひ聴いてみたいものだ。
今年で芸能生活27年目に突入した坂本。今回のアンケートにもランクインしている「また恋」や「夜桜お七」あたりは、カラオケでもOLなどの女性の定番ソングとして根強い人気を誇っている。
「そうですね、2曲とも、ド演歌じゃないところがまた不思議なんですが(笑)。『夜桜お七』はスローなところは満開の桜を、アップテンポは潔く散っていく桜をイメージして歌っています。自分の曲以外では石川さゆりさんの『津軽海峡冬景色』が好きですね。私は石川さんに憧れてこの世界に入ったので。そして、二葉百合子先生の『岸壁の母~歌謡浪曲~』。これはぜひ若い人にも聴いていただきたいです」
そんな坂本は、新たな企画で今年のシングルの第1弾を飾る。
「ちびまるこちゃんの作者のさくらももこさん作詞、『島唄』で人気の宮沢和史さん作曲の『花はただ咲く』という曲をちかぢかリリースします。さくらさんから直接お手紙をいただきまして。これにはとても感動しました。思ってもいないうれしいお話をいただいたので、今年は新春からすばらしいスタートが切れそうです」
2013年も坂本の歌声がサラリーマンを元気づけてくれそうだ。