一方、酒の席でしんみり聴かせるなら、吉幾三(60)が欠かせない。「雪國」が11位。「酒よ」が15位に入り、根強い人気がうかがえる。
「日本酒、特にお燗を飲みながら聴くなら絶対コレ。寒い故郷の冬景色が思い出される」(埼玉県・66歳)
このあたりが演歌の王道と言われるゆえんか。
演歌といえば、デュエットソングを忘れてはならない。
今回も7位に狩人の「あずさ2号」、49位に五木ひろし(64)と木の実ナナ(66)が歌う「居酒屋」、64位には都はるみ(64)と宮崎雅の「ふたりの大阪」などがランクインしている。
前出の石川氏は、
「五木ひろしや都はるみといった歌のうまい人たちもデュエットソングだと比較的歌いやすい。『浪花恋しぐれ』のようなセリフ入りだと、カラオケで盛り上がれるし、演歌を初めて歌う人は、まずデュエットがお勧めですよ」
その都はるみもヒット曲には事欠かない。28位に「北の宿から」が、93位には「アンコ椿は恋の花」も入っている。
「都はるみは、歌がヒットすると皮肉なことに私生活に波乱が起きる。芸能生活50周年の今年、豪快なはるみ節を聴かせてほしいですね」(石川氏)
私生活のピンチをみごとチャンスに変えた強運の持ち主といえば島倉千代子(74)だろう。数々のヒット曲の中から今回23位にランクインした「人生いろいろ」には、歌のタイトルを地でいく逆転ドラマがあった。
「当時おつきあいをしていた相手にだまされ、莫大な借金を背負いましたが、この曲の大ヒットでみごとに返済。まさに人生いろいろだと言われました」(石川氏)
演歌の名曲に交じって、8位に坂本冬美(45)の「また君に恋してる」、12位に森進一(65)の「冬のリヴィエラ」、18位にも森の「襟裳岬」がランクイン。いずれもフォークやポップスの香りのする曲が上位に入っている。そのあたりを音楽評論家の富澤一誠氏に聞いてみた。
「最近、演歌や歌謡曲のカテゴリーに入らない新しいジャンルが生まれています。森山良子や加藤登紀子、高橋真梨子、谷村新司、布施明などがそうで、僕は彼らの歌う大人のラブソングを『熟恋歌』と名付けています。そういった意味では、すぎもとまさとの『吾亦紅』や秋元順子の『愛のままで』も入ってきていいんじゃないかな」
さらに、富澤氏は今後の演歌についてこうも語る。
「日本の40歳以上の人口は、全人口の6割近くに当たる7000万人。ジャンルや年齢、キャリアにこだわらない音楽が今は求められている。日本人の魂の歌として演歌はもっと自由であっていいと思うね」
演歌の火を消さないためにも、新年会ではカラオケで演歌を歌おうではないか。