年末の紅白でJ-POP歌手たちの曲を聴いて、“こんなのどこがいいんだ”と憮然とした人も多いのでは。アサ芸世代の心に沁みるのはやっぱり演歌。魂を揺さぶられた名盤100曲を、本誌恒例のアンケートで振り返る。
「歌は世につれ 世は歌につれ」の名調子とともに、今も目を閉じるとよみがえる演歌のメロディ。昭和の心を今に伝える演歌こそ、我が心の歌。1000人アンケートで選んだ100曲の哀愁の歌声に今宵も酔っていただきましょう。
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数ある演歌の名曲の中で栄えある第1位に選ばれたのが、石川さゆり(54)の歌う「天城越え」だ。
「海外赴任している時、初めて聴いて感動で身震いした」(茨城県・72歳)
この言葉どおり、86年に発売されるやカラオケブームとも相まって若い女性の間でも爆発的な大ヒットとなり、この年のレコード大賞を受賞した。
参議院議員で、演歌に造詣の深いジャーナリストの有田芳生氏が裏話を披露する。
「実はこの曲、都はるみが歌うことになっていたんだけど、引退してしまったので歌えず、とても悔しがっていたのを覚えている」
ちなみにこの曲は、「記録やプレッシャーを乗り越えたい」という思いから、2008年にメジャーリーガー・イチローの打席曲に選ばれたことでも知られている。
石川さゆりは、4位にも「津軽海峡冬景色」が選ばれ、ご当地演歌の女王として面目を保った。
ランキング2位の「時の流れに身をまかせ」をはじめ、「つぐない」(第5位)、「愛人」(第9位)とベスト10に3曲が選ばれたのが、95年にこの世を去ったテレサ・テン(享年42)。
「『つぐない』を聴くと今は亡き彼女が懐かしく思い出される」(北海道・42歳)
「テレサ・テンの歌はいつまでも忘れられないいい曲です」(大阪府・57歳)
と、テレサの舌足らずな歌声が、どこか郷愁を誘うようだ。“記録”にも“記憶”にも残る歌姫を、前出の有田氏はこう分析する。
「いずれも150万枚を超えるミリオンセラー。演歌独特の難しい言葉遣いを避けて、わかりやすい歌詞にしたことで、20代、30代の女性が上司とカラオケに行って歌う定番ソングになった。大ヒット曲ではないけど、個人的には『別れの予感』がいちばん好きでしたね。ただ『愛人』に関しては当初、本人が『歌いたくない』とはっきり言っていましたね」
思いを込めて女心を歌い上げるテレサの早すぎる死を惜しむ声はあとを絶たない。
没後20年以上が経過しても、「川の流れのように」が3位にランクイン、「愛燦燦」も24位と健闘したのが、“女王”美空ひばり(享年52)。亡くなる直前に東京ドームコンサートで不死鳥のごとくよみがえったイメージからか、「川の流れのように」に票数が集中したものの、「王将」や「悲しい酒」などの名曲も見逃せない。ヒット曲が多すぎたことが逆に分散してしまう結果となった。
6位にランクインしたのが、東日本大震災復興ソングとしても注目された山本譲二(62)の「みちのくひとり旅」。
芸能レポーターで「勝手に演歌応援サイト」を立ち上げている石川敏男氏は、
「『みちのくひとり旅』の中の『流れていても』という歌詞が“放送禁止”になってね。それでも東北の人たちがこの歌を歌って励まし合っているのを聞いて譲二は泣いていましたね」
世代を越えて演歌は、我々日本人の心の中に生き続けているに違いない。
10位の「北酒場」をはじめ、「矢切の渡し」(31位)、「心のこり」(64位)が上位となった細川たかし(62)も、晴れやかな歌声に人気が集まっている。
「歌っていて気分爽快。手拍子が起きて一体感も生まれるから細川たかしは好きだね」(新潟県・58歳)
細川たかしはみんなで盛り上がる定番曲のようだ。