トラブルやスキャンダルの尻ぬぐいをさせられるのも、秘書の重要な「ブラック業務」である。国会より不動産取り引きにハマっていた議員に仕えていた時の実体験を、朝倉氏はこう続ける。
「不動産物件を巡り、裏社会の人間と議員がトラブルを起こしたんです。連日、地元の事務所にコワモテの人たちが押しかけ、たまらずにその議員は東京の議員宿舎に逃げ帰りました。それから私に連絡が来て、地元に残してきた母親を守るように用心棒をさせられたんです。本気で襲ってきたら勝てるわけないのですが‥‥。結局、半年間も警護態勢は続き、議員が金銭を支払って解決しました」
これでは秘書ではなく、ただの防波堤である。
女性トラブルを解決するのも秘書の役割の一つで、これまで何度も愛人宅に別れ話を切り出しに行ったことがあった。
「代議士の資産能力にもよりますが、手切れ金は、別れるために最低でも1000万円は必要でしたね」(朝倉氏)
議員は年間約2200万円の報酬をもらっているが、その他にも新幹線のグリーン車に乗り放題など、さまざまな「特典」がある。そこでも秘書にセコ~い悪だくみをさせることがあった。
「ある少数会派に所属する議員は、本会議と所属委員会に出ること以外はやることがなくて暇なので、グリーン車に乗って旅行にばかり行っていました。そのうち、『女房の分までタダにしたい』と言いだし、申込書をごまかすように指示してきたんです。国会内には旅行会社の支店があり、カウンターにJRの申込書が置いてあります。それに議員の名前を書いて2枚出してこいって。それぞれ新幹線の時間をズラして申請すれば、旅行会社も特に調べたりしないのでごまかせてしまうのです」(朝倉氏)
与党議員の秘書をしていた時には、党本部で行われている勉強会にも代理で出席するように命じられていたという。
「勉強会の数が多いので、出席するのが面倒くさくなって、ほとんど秘書に任せていました。資料だけは必ず持って帰ってくるように言われ、きちんとファイルさせられます。議員は一度も読まないので内容も理解していないのですが、議員会館の部屋に置き、陳情に訪れた人などに、これだけ仕事をやっているんだと、アピールしたいのです」(朝倉氏)
これでは、見栄とハッタリだけでセンセイ稼業をやっているようなものだ。