安倍改造内閣の目玉人事と目された片山さつき地方創生相。ところが蓋を開ければ、いきなりの「口利き疑惑」が発覚! それどころか、責任を秘書に押しつけ、報じた週刊誌を名誉毀損で訴える強気な態度。だが永田町では、この程度のトカゲの尻尾切りは当たり前だという。そうした実態に秘書たちが立ち上がり、「ブラック業務」報告書の中身をぶちまけたのだ。
10月24日からいよいよ始まった臨時国会で、安倍改造内閣の出はなをくじいたのは、片山さつき地方創生相(59)のスキャンダル。就任早々の10月18日発売の週刊誌で、国税庁への口利き疑惑が報じられたのだ。政治部記者が解説する。
「15年に片山氏の私設秘書が会社経営者から確定申告を巡る相談をされ、100万円を受け取ったあとに片山氏が国税庁関係者に電話をかけたというのが記事の内容。報道後、片山氏は記者団に『口利きしたことはなく、100万円を受け取ったこともまったくない』と話し、秘書に責任を押しつけて幕引きを図ろうとしています」口利き疑惑報道を否定した片山氏は、名誉を傷つけられたとして、発行元の文藝春秋に1100万円の損害賠償を求めて提訴。時間の引き延ばしで、初入閣で得たポストにしがみつく作戦なのか。しかも秘書は、このまま全責任を取る公算が高い。つまり「トカゲの尻尾切り」で、政治家は知らぬ存ぜぬを貫こうとしているように見える。
振り返れば、政治家にとって秘書とは、使い捨ても同然な、責任を取らされるだけの存在だ。竹下登元総理の秘書を30年間務め、「竹下の金庫番」とまで呼ばれたA氏は、88年のリクルート事件後、事情聴取が続く最中に自宅の寝室で首つり自殺。10年には、現・自由党の小沢一郎代表(76)の資金管理団体「陸山会」を巡る事件で、東京地検特捜部は秘書3人を政治資金規正法違反容疑で逮捕したこともあった。
17年間にわたって政策秘書を務め、8人の議員に仕えてきた作家の朝倉秀雄氏は、秘書の「実態」をこう明かす。
「仕える議員によって犯罪の片棒を担がされたり、下僕扱いされることは珍しくありません。昨年6月に豊田真由子元衆院議員(44)の、政策秘書の男性に対する暴言や暴行が話題になりましたが、これもよくある話。自分の手が痛くなるので受話器で殴打してきたり、車の運転中に背もたれを蹴りながら、『赤信号でも突っ切れ!』とメチャクチャな命令を受けたこともあります。それでも、口答えをすれば議員の一声で即解雇の危機が待っているので、秘書の仕事を続けたければ黙って従うしかないのです」
現役のベテラン国会議員の秘書も、こう明かす。
「以前、大臣経験もある代議士の秘書をしていた時、違法行為をするように命じられたことがあります。東京のとある支援企業を紹介され、その会社に1000万円の補助金(国費)を口利きするから、500万円をキックバックしてもらうように言われたのです。私が渋っていると、『キミさ、国会で政策をやるなんて、考え違いも甚だしい。政治は金と票。キミはそれを集めるのが仕事なんだ』と真顔で忠告されてアゼンとしたものです。不正を断ってクビになった秘書は何人もいましたね」
口利きビジネスの他にも同議員の事務所では、秘書給与のピンハネが当たり前のように横行していた。
「表向きはその金を事務所運営費にすると説明されましたが、単にネコババして自分でせしめるだけでした。そもそも、文書通信交通滞在費が年間1200万円、政党助成金も受け取っているのに、この議員は全額を自分の懐に入れ、1円たりとも事務所のために使わなかったんです。そのくせ、毎日のように高級ソープランドで遊んでいたので、アキれるしかありません」(ベテラン秘書)
政策よりも“性策”。その後、いわくつきの議員は、有権者にそのいいかげんさを見抜かれたのか、選挙で落選して政界を引退したという。