「M-1グランプリ2018」は、決勝初進出となった「霜降り明星」が史上最年少優勝を果たし大いに番組を盛り上げたが、上沼恵美子への批判騒動しかり、毎年のこととはいえ、審査を巡っては様々な議論があるようだ。
今回、最も多かったのは、“3年連続2位という結果に終わった「和牛」こそが優勝にふさわしかったのではないか”という意見だ。
「ネットニュースのコメントやSNSにも、『和牛が良かったと思いますが、プロから見る目と素人から見る目が違うんですかね?』といった意見がほとんどでした」(芸能記者)
しかし、伝統的なしゃべくり漫才を高く評価してきたオール巨人も、霜降り明星の1本目には93点の高得点をつけ、上位3組での最終決戦にも霜降り明星に票を入れており、ネットユーザーたちの指摘と現実とは少々ズレがありそうだ。
結局、何が結果を分けたのか。有名お笑いショーレースの審査員を務める、あるお笑い番組関係者はこう話す。
「『週刊プレイボーイ』の連載でオール巨人が審査基準について、『新鮮味とうまさ、その総合点』と書いていたように、プロの芸人がネタを見る場合、まず大きなポイントとなるのは“新しさ”です。今までにない設定や笑いを生み出すシステムがあるかないか。その発想と本人たちの技術が合致して、ちゃんと笑いが取れているか。この“新しさ”の見極めや評価が、プロと素人の大きな差といえるでしょう」
ただ、時にそれを超えてくるのが、芸人個々人の「個性」や「魅力」なのだという。
「要は、単純な好き嫌いです。特に、関西の師匠方が若手によく言うのは、『舞台でもっと汗をかけ。一生懸命やっている姿は、人間が可愛く見えて笑ってもらえるんやで』というアドバイス。実際、この日は、サンドウィッチマンの富澤を含む複数の審査員が“人間が見えるか見えないか”を審査基準にしていました。和牛は確かに新しいしうまいしおもしろいのですが、スマートで品はあるものの、可愛くは見えない。またジャルジャルは、富澤に『マシンに見える』と言われたように、ネタの完成度は高くとも人間味が出なかった」(前出・お笑い番組関係者)
そうした点で、汗だくの熱演を見せた霜降り明星は、ネタ自体には目新しさはなかったが、「プロの審査員の好き嫌いを大いに左右する可愛らしさがあり、人間が見えた」のだという。
「ただ、その熱演ぶりは、ライトな感覚で番組を楽しむ一般視聴者には“うるさい”“見ていて疲れる”と映ったということでしょうね。M─1は、おもしろさの絶対評価を決めるものではない。そもそも、そんなことは不可能で、不確定要素が多いからこそ、見る者、演じる者の感情を様々にかき乱す。だからドラマが生まれ、人気コンテンツになっているわけです」(前出・お笑い番組関係者)
そう考えると、上沼の審査時の発言は、実は、相当にわかりやすいものなのかもしれない。
(露口正義)