弁護士事務所を舞台にした月9ドラマの「SUITS」(フジテレビ系)が12月17日、2ケタ視聴率の10.8%で最終回を終えた。平均視聴率は今年の月9ドラマで最高記録となる10.7%となり、主演の織田裕二も面目を保った形だ。そんな「SUITS」には続編や映画化を期待する声もあるが、最終回の内容を見る限り、その可能性は薄いという。週刊誌記者が指摘する。
「法曹界をテーマに据えているにもかかわらず、本作では法律や規則を無視した描写が目に余るのです。中島裕翔の演じるアソシエイト弁護士が法曹資格を持っていない点は、原作となった同名のアメリカドラマの設定そのままなので、百歩譲って良しとしましょう。しかし時計メーカーの次期社長レースを取り上げた第3話では、取締役会の開催を巡って明らかな違法行為を堂々と放送。そして最終回でも現実にはあり得ないシーンで物語を終えていました。これでは続編を作りたくても、設定が破綻することは明らかです」
そのシーンとは、中島を雇っていた敏腕弁護士の織田が、中島にボストン行きの航空券らしきものを渡すというもの。2年間という年限を設けた織田に対し、天才的な記憶力を持つ中島は「1年で」と意気込むも、織田は「一生分遊んでこい」と告げていた。この会話が何を意味するのか、週刊誌記者が続ける。
「これはハーバード大学のロースクールに通い、2年で現地の弁護士資格を取得しろという意味でしょう。このドラマではハーバード留学という肩書が何度も登場していましたし、日本では通用しないはずのアメリカ弁護士資格も、最近ではアメリカとの企業取引における重要なツールとして認知度が高まっています。ただ問題はドラマの設定上、中島は高校中退だということ。アメリカのロースクールに通うには大学卒業が必須要件なので、そもそも中島はロースクールに入学することすらできません。日本の弁護士資格を持っていれば話は別ですが、本作ではニセ弁護士という設定。また合否判定には有力弁護士事務所からの紹介状がけっこうな威力を発揮しますが、さすがに受験資格を覆すのは無理です」
しかしそんな簡単なことくらい、ちょっと調べればわかりそうなものだが、なぜ「SUITS」の制作陣はそんな単純ミスを犯したのだろうか。
「おそらく原作ドラマの設定を読み違えたのでしょう。アメリカ版の『SUITS』では、大学中退のニセ弁護士が、最終的にニューヨーク州の弁護士資格を取得します。それは審査会(bar committee)の面接という特例的な手段を経たものであり、その前提として有力な弁護士事務所での勤務経験が実績にカウントされていました。それと同じ道筋を日本人がたどることは不可能で、裏道はないのです。ただ本作での中島は日本の司法試験を受けることができないという設定なので、どうしてもアメリカの弁護士資格を取得させたいのでしょう」(前出・週刊誌記者)
これほど現実を無視したドラマゆえ、無理筋を承知でしれっと続編を制作する可能性もゼロではないのかもしれない。
(金田麻有)