テレビに登場すると銭湯の女湯が空っぽになった──今でも語りぐさになっている大鵬(享年72)=本名・納谷幸喜=の伝説だ。しかし、大鵬は女性ファンばかりか、男にもモテたという。もちろんご本人に「その気」はないが、なんと、大鵬をいちずに慕う力士が胸を借りて稽古している途中でイッてしまったというのだ。
「大相撲の世界は女泣かせの絶倫ぞろい。一晩で10回、20回もやったという逸話の持ち主がゴロゴロしていています。でもね、中には男のほうが好きだという人もいるんですよ。そんな一人、押し相撲が得意な元幕内力士のAさんは少年の頃から大鵬の大ファンだった。できれば大相撲に入り、大鵬の胸を借りて相撲を取りたい。それが悲願でした」
こう語るのは角界事情通の力士Xである。
そう大柄ではないAさんは、初土俵を踏んでからも苦労したが、大鵬の胸を借りたい一念で稽古に精進した。
「念願かなって幕内に昇進したのは10年後で、その時すでに大鵬は横綱としてのピークを過ぎていましたが、それでも依然、無敵だった。大鵬とAは一門が違うので稽古で胸を借りられるのは巡業の時しかないんですが、巡業では稽古をつけてもらおうという力士が土俵の周りを取り囲み、なかなか順番が回ってこなかった。それでも待ち続けてAさんがようやく大鵬の分厚い胸板目がけてぶつかっていった。ところが、Aさんによれば、何番か取るうちに大鵬の胸板に顔をうずめて荒い息をしていると、苦しいというよりウットリしてきたというんです。で、アッチのほうもビンビンになり、とうとうマワシの中に射精してしまったというんですね。Aさんの男好きは知る人ぞ知るところだったので、様子がおかしいことに気づいた何人かは苦笑していたそうです」(力士X)
いやはや、男にここまで慕われるのも考えものだが、もちろん、女性ファンも数限りなかったという。
「前人未到の32回優勝を成し遂げた強さに甘いマスク。女性ファンの中には、ぜひ大鵬の子が欲しい、結婚してくれなくていいから子種だけでもちょうだいという人が後援会を通じて殺到したといいます。中には結婚はしなくてもいいからウチの娘に子種を授けてほしいという親までいたらしい。もちろん大鵬本人も絶倫で鳴らした末に、美貌の芳子夫人と結婚したんです」
ところが周知のように大鵬は36歳の時に脳梗塞で倒れてしまう。当時夫人はまだ29歳。若くて美人なのに夫との夜の生活が難しくなった彼女に、口さがないマスコミや角界関係者が、「夫人が弟子に手をつけている。大鵬親方も黙認しているらしい」などと騒いだこともあった。以降、「納谷家」にスポットライトが当たったということのようだが、夫妻は一連の騒動に一切沈黙。その名誉を守ったものだった。Xとは別の力士が明かす。
「現役時代から高血圧の大鵬さんは、桁外れの酒豪で一晩一斗(10升)飲んだという伝説も残っています。しかもツマミは塩辛とか塩分の強いものが好物で、若くして脳梗塞を患ったのもそのことが遠因になったのかもしれません。でも器は本当に大きくて、終生尊大なところが全然なかった。晩年、相撲博物館の館長として取材を受ける時も威張ったところがなく、丁寧に受け答えしていた」
六本木でケンカしているような元横綱に聞かせてあげたい話である。大横綱にあらためて合掌──。