近所の神社に手を合わせたことだし、あとは酒でも飲んで──。それで、御利益にあずかろうとはムシがよすぎやしないか。今年は亥年! やはりイノシシとゆかりのある神社仏閣を訪れてこそ、初めて運も開けてくる。“霊猪”に出会える「初詣スポット」を案内する。
「イノシシにまつわる神社仏閣というと、単純に分けて2つあります」
こう話すのは、「不思議と運が開けてくる! 噂の神社めぐり」(学研プラス刊)の著者、本田不二雄氏。「神仏探偵」と称し、多くの寺社の魅力を伝える案内人である。続きを聞こう。
「まず、和気清麻呂を祭神として祀る神社です。奈良時代の役人である清麻呂は、日本史で習った『宇佐八幡宮神託事件』で名前をご記憶の方も多いのではないでしょうか。称徳天皇に取り入った僧・道鏡が『道鏡を天皇にすれば天下は平和に治まる』という宇佐八幡の神託を利用して、天皇の座をうかがっていた。そこで、神託の真偽を確かめるべく宇佐に遣わされたのが清麻呂でした」
結果、清麻呂は「天皇の地位には必ず皇族の者を立てよ」という道鏡追放の神託を受けて都に持ち帰る。当然、道鏡の怒りを買うことに。清麻呂は捕らえられ、足の腱を切られ、自力で立てない状態で大隅国(現在の鹿児島県)へ流罪となってしまう。
「その途中、清麻呂は宇佐八幡宮をお参りしようとします。道鏡は清麻呂を流罪では飽き足らず、抹殺せんと刺客を放っていたのですが、300頭の猪が突然現れ、清麻呂一行を取り囲んで40キロにわたって刺客から守った。そして、宇佐八幡にお参りすると、不思議なことに清麻呂の足が治っていたとの言い伝えがあるのです。その言い伝えのため、清麻呂が祀られた神社の鳥居には狛犬ではなく狛猪がいるのです」(本田氏)
代表格とされるのが、京都の護王神社だ。京都御所の蛤御門の近くに鎮座している。本田氏が続ける。
「もともとは和気氏が建立した寺の一隅にあった神社でしたが、明治時代になって、身を挺して皇統を守ったとして、京都御所の真ん前に遷されたのです。いわば、皇族の守り神でもあるのです。ただ、先の言い伝えのため、現在は『足腰回復』の御利益があるとして有名になっています」
狛猪を眺めるだけで、健康運が上向いてきそうではないか。しかも、霊猪の力はそれだけではない。
「道鏡というのは、今風に言うなら、超パワハラ上司です。護王神社の授与品には『官職御守護』と『職難御守護』という職業に関するお守りがあり、『パワハラ除け』の御利益があると言っていいのではないでしょうか」(本田氏)
清麻呂は日本で最初に私塾を作った功績がある。また、姉の和気広虫は孤児救済に尽力したと伝えられ、学問の神、子育ての神として御利益があるという。