健診では発見できない「隠れ重大病」がある。
全国に予備軍を含め2210万人(07年厚労省調べ)の患者がいて、国民病とさえ言われる糖尿病。多くの人は健診の血糖値の数字(110ml/dl以下が正常)ばかりを見て、ホッと一息ついているだろう。
ところが、この正常値の人の中にも、「隠れ糖尿病」が存在するのだ。
糖尿病専門クリニックの「あいそ内科」院長の相磯嘉孝氏はこう話す。
「一般的な健診では空腹時血糖値を測定しますが、その数値が正常であっても、食後1時間後ぐらいから急激に血糖値が上昇する人もいます。健診ではなかなか見つけにくいことから、『隠れ糖尿病』と呼んでいます。日本人に多いII型糖尿病は最初から空腹時血糖値は高くなく、むしろ食後血糖値が急激に高くなることから始まり、徐々に空腹時血糖値も上がっていくことが認められています。糖尿病の初期とも言えるのです」
健診の結果が良好だからといって、祝杯を上げてドンチャン騒ぎなどは言語道断。健診で測定しない食後血糖値こそが重要なのだから‥‥。
「『隠れ糖尿病』の目安として食後血糖値が140ml/dlと考えます。この数値を超えれば、動脈硬化のリスクは上昇し、脳梗塞や心筋梗塞の遠因になるためです」(前出・相磯氏)
むろん、高血糖の諸症状である「ノドが渇く」「尿の量と回数が増える」などを自覚したら、健診の結果が良好でも「隠れ糖尿病」を疑うべきだ。
ところが、「隠れ糖尿病」の多くはやっかいなことに自覚症状がないという。そこで、血糖値だけでなく健診で測定されるHb(ヘモグロビン)A1cにも注目したい。
「HbA1cは測定時の血糖値に左右されず、その人の約1カ月の血糖の状況が反映される数値です。HbA1c(JDS値)が6・1%を超えると『糖尿病型』と診断されますが、5・6%を超えれば『糖尿病の可能性を否定できない』と分類されますので、この数値が『隠れ糖尿病』の目安と言えるでしょう」(前出・相磯氏)
あわせて、空腹時血糖値が106ml/dlを超えたら、「隠れ糖尿病」の可能性があるという。専門のクリニックに行き、ブドウ糖負荷試験という食後血糖値を測る検査を受けることをオススメしたい。
前出・相磯氏が言う。
「ブドウ糖負荷試験は時間がかかるので、受けたがらない方もいます。そういう方は、食事をしてから1時間後の血糖値を定期的に測るべきです。高価ですが、個人でも血糖値測定器を購入できますからね」
高血糖は血管の壁を傷つけ、失明や腎不全などの合併症を引き起こす。決して高い買い物とは言えない。