テリー まず、お笑い芸人を目指したのはどうして?
ヒロシ 幼い頃から、ビートたけしさんに憧れていたんです。大学卒業後は保険会社に就職したんですが、営業職で全然向かない仕事だし、夢もあきらめきれなくて、23歳の時に福岡吉本に入りました。でも、まったくダメでしたね。
テリー そうなんだ。
ヒロシ 同期とコンビを組んで地元で3年ぐらいやったんですが、給料のマックスが月1万円ぐらいだったんです。それで26歳の時にコンビで東京に出てきたんですが、途中で相棒が辞めちゃったんです。
テリー そこからピンになるのか。じゃあ、ずいぶんバイトもやったのかな。
ヒロシ 漫画喫茶やコンビニ、いろいろやりましたけれど、最終的に29歳の時ホストになりました。
テリー へえ、ホストってお客さんから高価な貢ぎ物をもらったり、エッチをしたり‥‥みたいなイメージがあるけど。
ヒロシ 僕も最初はそう思ったんですよ。でも、そんなこと、全然なくて。当時、そのお店では僕がいちばん年上だったと思うんですが‥‥まァ地獄でしたね。
テリー 地獄!? 例えば、どういうことがあったの。
ヒロシ 僕、お酒が飲めないんですけれど、先輩が指名客に「飲んで」ってお酒をすすめられたら、僕らヘルプが「いただいていいですか!」とか言って、先輩の代わりに飲まなきゃいけないんです。
テリー ん? そりゃまたなんで?
ヒロシ 一晩で何人も相手をする先輩を潰しちゃいけないし、お酒を飲んで売り上げを上げるのがヘルプの役目なんです。また、そのタイミングを逃すと、あとで裏に連れていかれて殴られたりするんですよ。
テリー キャリアの差とはいえ、年下にそんな扱いをされるのは厳しいな。じゃあ、女性方面は? その頃はまだ性欲もあって、楽しめたんじゃないの。
ヒロシ 確かに、僕を指名してくれるお客さんもいたんですけれど、ビジュアル的にちょっと‥‥「岩をどかしたら出てきた」みたいな人ばっかりだったので。
テリー ハハハハ! でもぜいたく言えないだろう、お客さんなんだから。
ヒロシ 僕を指名する人は大抵、お金もないんですよ。しかも、ホストクラブには恐ろしい仕組みがあって、「月末までに指名ホストに払う」という約束で、お客はツケで飲み食いすることができるんです。もし月末にお客が逃げたりすると、その何十万円という勘定がそのまま自分の借金になるので、いくら「売り上げを上げろ」と言われても怖くて上げられないんですよ。
テリー じゃあ、お客とのエッチなんて、もってのほかみたいな感じ?
ヒロシ たまに「かわいいな」と思う人から指名されて、ホテルに誘ったこともあるんですが、必ず「やっぱりこんなこと、よくない」って帰っちゃう。逆にかわいくないお客さんは、もう積極的で。
テリー 仕事につながるんだから、たまにはそういう子も抱いてやらないと。
ヒロシ 僕、同業者から「ポケモン使い」って言われていたんですよ。「あいつ、またモンスターを連れて来たぞ」と。
テリー しかも、集めてもうれしくないやつ(笑)。
ヒロシ 性欲全開の時でも抱けないぐらいで‥‥頭では仕事とわかっていても、あれは無理でしたね。