テリー じゃあ、しがみついてたホリプロを辞めちゃったのはどうして?
永野 所属して5年たったある時、初めてマネージャーさんに飲みに誘われたんですよ。事務所の近くの居酒屋で、「上はお前が後輩たちに悪影響を与えると言っている。お前をクビにさせたくないから、お前から『辞めさせてください』と言ってくれ」って泣かれたんです。
テリー すごい話だね。
永野 で、「俺はお前のことが好きだから、いつでも電話してこい」って言われたので、翌日いつもどおりに電話したら、いきなり塩対応で。その時、業界の冷たさを感じました。忘れもしない、28歳の時です。
テリー それは傷つくなァ。しかも、そのくらいの年齢だと、宮崎の友達も仕事でいいポジションに就いてたりして、焦りも出るよな。
永野 だからその時は、地元の人に「あきらめて帰ってこい」って、けっこう言われましたね。「30歳まで」みたいに期限を決めて活動してる芸人仲間もいましたし。でも僕、たぶんやめられないタイプの人間なんですよ。もし今、こういう状況になっていなくても、お笑いは続けていると思います。
テリー とはいえ、そんな形で解雇されて、当時は精神的にも、生活もキツいよね?
永野 そうですね。その4年後に今の事務所に入るんですけど、その間に僕、出会い系サイトのサクラのバイトをしてたんですよ。
テリー ああ、そういう系統はバイト代もいいしね。
永野 そこに、どう見ても悪そうな、いかにもチャラチャラ遊んでそうな若者たちがいたんですね。でも、彼らのほうが僕よりもよっぽどちゃんと働いてるんですよ(笑)。上司とのコミュニケーションも上手だし、パソコンもブラインドタッチで打てたり。それはけっこう衝撃的でしたね。
テリー それ、わかるよ。「お笑いはウケない、普通の仕事にも就けない。俺はいったい何なんだ?」みたいな気になるよな。
永野 かといって、ハングリー精神みたいなものがあるのかというと、これがまた全然ないですしね。あの頃は本当にヘコみました。
テリー こういう人生がずっと続くんじゃないか、という不安もあった?
永野 ありましたね。だから僕、30代はテレビをほとんど観てないんです。
テリー それは悔しくて?
永野 そうですね。「テレビなんかつまんねえや」と思って。観たところで、今ならおもしろいと思えるようなことも全然おもしろく感じられなかったんです。
テリー それ、ちょっとヤバい状態だよね。
永野 死にたいと思ったことはないですけど、寝る時に「このまま目覚めなければいいのに」みたいに思ったことがありましたね。
テリー そうか。現在のブレイクまで、そこからさらに10年くらいの時間がかかるわけだしね。
永野 ええ。変なことばかりやっていたので、おかげさまで、ライブとかでは一部でマニアックな人気があったんです。そのせいか、「あなたの芸はテレビ向きじゃないから」って言ってくる人もいたりして、それが本当につらくて。
テリー でもさ、逆にそれだけの時間があったから、世の中の人が普通のお笑いに飽きて、「あ、こういうお笑いもアリだよね」と永野さんのネタが市民権を得たわけじゃない。この時間は、決してムダではなかったと思うけどね。
永野 ありがとうございます。そう言っていただけるとホッとします(笑)。