ポスティングシステムで大リーグ移籍を目指していた菊池雄星(27)がシアトル・マリナーズと契約した。4年総額61億6000万円が保証される内容で、最大7年総額126億円とされる破格の大型契約である。一方、期待の大きさとは裏腹に、行く末には早くも嵐の予感が漂うのだ。
1月3日、マリナーズの本拠地T-モバイルパークで行われた入団会見にて、雄星は流暢な英語で挨拶し、集まった地元メディアを驚かせた。しかし笑みの絶えない雄星にも、急に表情をこわばらせる「NGワード」があった。母校・花巻東の3学年後輩・大谷翔平(24)に関する質問が飛ぶと、一瞬、空気が変わったのだ。「今も刺激になっている。(大谷は)1年目から結果を出したので、自分も頑張りたい」と口にしたものの白い歯は見せず、それ以上は多くを語らなかった。
大谷は昨季からエンゼルスでプレー。日本ハム時代と変わらぬ二刀流でメジャーでも旋風を巻き起こし、新人王も獲得した。その大谷が在籍するエンゼルスはマリナーズと同じア・リーグ西地区だけに、直接対決の機会も比較的多く巡ってくるだろう。ところが注目対決に向けて、当の雄星はいかにも素っ気ない。スポーツ紙デスクが解説する。
「雄星が大谷を過剰に意識しすぎるあまり、両者の間に大きなミゾができてしまっているんです。雄星は後輩の大谷と何かと比較されてきた。そして大谷がスーパースターになっていく過程で、雄星が避けるようになったんです。大谷は日本ハム時代の13年開幕戦で西武・岸から2安打を放つ衝撃のデビューを飾り、翌日、先輩の雄星のもとに挨拶に行った。最初こそ握手して迎えた雄星ですが、大谷が2段抜かし、3段抜かしで飛び越えていく活躍をするにつれ、挨拶が会釈に変わり、しまいには遠ざけるようになっていったんです」
雄星が大谷を敬遠して近づかないのは徹底していたという。
「年末年始には花巻東に挨拶を欠かさないのに、必ず『大谷はいつ来ますか?』と確認して、日にちをずらして行くんです。岩手で大谷も参加した野球教室があり、懇親会があった年など、雄星は顔を出さなかった」(スポーツ紙デスク)
大谷自身は、雄星に憧れて花巻東に入学した経緯もあり、何のしがらみもなかったのだが、雄星の“大谷嫌い”によって、現在の両者にはかなりの距離感ができてしまっているようだ。BBWAA(全米野球記者協会)に所属する、現地の記者が明かす。
「昨年12月に雄星は、ロスにある代理人・ボラス氏の事務所で打ち合わせや交渉があり、2度にわたって10日間ほど滞在しました。その事務所から大谷の自宅は車で約20分ほどなのに、2人は顔すら合わせなかった。会おうと思えばいくらでも会えたのに、どちらからも連絡を入れなかったんです。大谷は雄星のチームがまだ決まっていなかったから『今はそんな時期じゃない』と話していたそうですが‥‥。過剰に先輩から意識されているのを察して、彼も気を遣うようになってしまいましたね」
とはいえ、19年シーズンは、エンゼルス戦で雄星が先発マウンドに立てば、トミー・ジョン手術の影響で打者に専念する大谷と対峙しなければならない。
ちなみに日本での2人の対戦はわずか2試合。13年は2三振、17年に2安打、1三振だった。あまりに対戦が少ないことでNPB関係者からは「雄星が球団に直訴して、苦手なソフトバンク戦を回避したように、大谷との対戦も意図的に避けていたのではないか」といぶかる声も少なくなかった。