ヘアヌード写真集出版の陰には、借金が潜んでいる場合が少なくない。茂みの奥に見え隠れする、女優たちの淫靡な悲哀を鑑賞してみよう。
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借金ヌード事情に明るいミュージシャンの掟ポルシェ氏が語る。
「ヘアヌード写真集を借金のカタとして撮るということは、その女優には『脱げば何とかなる』というネームバリューがあることを意味し、実はとっても喜ぶべきことなんです。実際、作品にも、『脱げば何とかなるでしょ!』というヤケクソ感が表れると同時に、どうせ脱ぐならおもしろく、きれいに撮ってほしいという思いも反映されていますね」
辺見マリ(62)は占い師に5億円も貢いで借金を作り、93年の「INFINITO」(竹書房)を撮った。蛇がナチュラルなヘアの上をはうヌードは大反響を呼んだものだった。「『他人の不幸は蜜の味』と言いますが、『辺見マリさんのヌードを1度見てみたい!』と思っていた人たちは借金ができたことで、ようやくその機会を得た」(前出・掟氏)
芸能評論家・肥留間正明氏は、当時の辺見マリの思いを解説する。
「当時、対談に引っ張り出すと、彼女は言いましたよ。『誰がすき好んでヘアヌードなんかやるもんですか!お金のためだからしかたないんです』って」
真行寺君枝(53)は元夫の故・大口広司氏の会社が倒産し、97年に大口氏の撮影による作品「Made in Love」(ぶんか社)を出版し、さらに5年後の02年にも無一文となった生活の打開策として「I LOVE YOU」(バウハウス)でヌードを披露している。「もともと表情に憂いのある方で、不幸が似合います。旦那の借金を背負って脱いだというシチュエーション込みで、真行寺君枝という女優なんじゃないでしょうか。不幸がヌードに陰影を与えていて、さらによく見えますね」(前出・掟氏)
女優・佳那晃子(56)も夫で放送作家の源高志氏の会社経営の失敗などで、一時は4億円の借金を背負った。「幻想」(風雅書房)を発売したのは94年だ。
「4億円のカラダと思うと味わい深いですね。泥にまみれたヌードのカットを見ると、『自分が泥をかぶれば大丈夫!』という思いが伝わってきます。ただ、芸術的に見せようという試みが借金ヌードの卑猥さを緩くしてしまっている」(前出・掟氏)
とはいえ、当時の佳那は、他の誰よりも借金とヌードをリアルに結び付ける状況だった。
「レポーターが取材に行くと、佳那さんが出てきた。電気が来てないから寒い、とダウンなどを着込んでね。電話も止められているから、公衆電話をかけに行くところだそうで、レポーターに『携帯電話、貸してください』と言っていましたよ」(芸能記者)
98年に所属事務所が倒産。社長が多額の借金を残して消息不明─という事件に巻き込まれたのは、大西結花(44)である。翌99年には自身2度目のヘアヌード写真集「遠野 冬」(宙出版)を出した。写真集を手にして掟氏が言う。
「最後に長い文章が載っています。趣旨は、この写真集は借金のために撮ったのではないという彼女の気持ちです。これを掲載することで、彼女に逃げ道を用意してあげていますね。それにしても艶かしい写真集です。赤い肌襦袢、馬、火、毛皮‥‥、生命=セックスを感じさせるメタファーが結構使われていますね」
借金はあれど、それぞれにヌードは美しい。