日に日に寒さが増すこの時期、風呂こそが体を温め、疲れを癒やしてくれるオアシス。が、ただ漫然と入るだけでは実にもったいない。体の不調や目的によって、入り方は違うのだ。科学的な入浴法を身につけて、体を芯から健康にしたい。
入ったとたんに立ちくらみを覚え、心臓がドキドキ。それがこの寒い季節に多発する、風呂場でのヒートショックだ。
「冬場は脱衣所が寒くなるので、入った瞬間に交感神経が刺激され、寒さでいったん血圧が上がります。そして42度以上の風呂にドボン。するとさらに交感神経が刺激されて血圧が上がり、血管に負担をかける。そうならないためには、まず脱衣所と浴室の温度を20度以上、またリビングとの温度差を5度以下にして、冬でもお湯の温度は42度未満にすること。飲酒後は血管が拡張し、一時的に血圧が下がりやすくなるため、どうしても入浴したいのであれば、最低2時間は空けることをお勧めします」
こう解説するのは温泉療法専門医で、近著に「最高の入浴法」(大和書房)がある、東京都市大学の早坂信哉教授である。
早坂教授はお風呂研究を始めて20年。3万人を調査してきた入浴のスペシャリストである。
「熱い風呂に入ったほうが体が温まると思っている人がいますが、まったくの勘違い。人間の体には一定の状態に保とうとする機能があり、体が温かくなるとその分、たくさん汗を出して体温を下げようとする。なので温熱効果を継続させたいのであれば、38度から40度程度のちょっとぬるめの湯につかるほうがいい。お湯の水圧により全身がマッサージされたようになる静水圧作用や、浮力作用も得られるため、基本ルールさえきちんと押さえておけば、入浴は自宅にいながらにして、健康寿命を延ばす最高の健康法と言えるのです」
早坂教授によれば、入浴効果倍増のカギを握るのが、入浴時間と温度だという。
「温熱効果のメリットとして血流の改善と痛みの軽減などが挙げられますが、私たちの体にある自律神経は42度以上の熱い湯に入ると交感神経が刺激されて興奮状態になり、逆に40度程度では副交感神経が刺激され、心身がリラックスします。つまり、このわずかな温度差による効果が、さまざまな症状を緩和させるポイントになってくるんです」
早坂教授が推奨する「症状別の入浴温度と時間」については別表をご覧いただきたいが、
「例えば高血圧の人の中には、この時期、ヒートショックを心配して風呂を我慢する人も多い。でも、38度から40度ほどで15分程度入ることで血管が広がり、血流がよくなるため、結果的に血圧を下げる効果がある。高血圧気味の人ほど、入浴による改善効果が期待できると考えていいでしょう」