また、一番風呂に入るのであれば、入浴剤を入れるほうがいいという。
「日本の水道水は軟水といわれ、海外の水に比べるとミネラル分などが少なく、人間の体にとってはかなり『薄い水』。基本、体は薄いものに触れると、それが刺激になります。例えば市販の目薬を目に入れてもしみないのは、濃度が調整されているから。ところが水道水で目を洗うと、ゴワゴワした違和感がある。あれが浸透圧という濃さの違い。食塩で換算すると約0.9%程度の濃さですが、何も溶け込んでいない水道水との間には浸透圧の差があり、それが体に負担を与える。つまり外側の水が薄すぎると、皮膚にも負担がかかるのです」
では、二番風呂になると、どんな変化が起こるのか。
「簡単に言うと、前に入った人の汚れなどの有機物がお湯の中に入り、そこに塩素がくっつくので塩素が減ります。さらに汚れが溶け込むため濃さが増してお湯がマイルドになるんです」
とはいえ、汚れた湯に入ることに抵抗を覚える人もいるだろう。そんな人に最適なのが入浴剤であり、
「入浴剤にはアスコルビン酸やグルタミン酸といった成分が入っていて、塩素を中和させてくれます。選ぶ際は、医薬部外品か浴用化粧品のどちらかにすること。温泉地土産などで置かれている入浴剤には成分表示がないものもあり、何が入っているかわからない。最低限はそこを基準にするといいでしょう」
体を洗う際はタオルを使わず、泡立てたソープで手洗いするのが基本。
「皮膚は案外薄く、表面の角質層は0.02ミリ程度。ラップ一枚分くらいの厚さしかありません。そんなところをアカスリみたいなものでゴシゴシやると全部剥がれてしまいます。特に年齢が上がったら、タオルはやめたほうがいいでしょう」
入浴後は暑いからといって、いきなりエアコンや扇風機の前に行くのも厳禁。
「体についた水滴をすぐにふき取り、温熱効果を保持すること。できれば薄着で毛布にくるまり、暗い部屋で30分くらいゴロゴロしてみてください。心身ともに、最高にリラックスできるはずですよ」
早坂教授らの研究チームでは、要介護認定を受けていない65歳以上の男女約1万4000人を、3年間にわたって追跡調査。結果、1週間に7回以上、湯船につかった高齢者は週2回以下の人に比べ、要介護認定リスクが約3割減少していることが判明した。
「つまり、風呂は入り方さえ間違わなければ、最高の健康増進ツールになる。最近では湯船につからずシャワーだけという人が増えていますが、そんな人にこそ、風呂の健康効果を再認識してほしいですね」
無理なく毎日実践。風呂こそが健康の源なのである。