休みには温泉にゆっくり入って疲れをとりたい。多くの人が望んでいることだが、これが実は体に悪いという。
新刊「なぜあなたの疲れはとれないのか? -最新の疲労医学でわかるすっきり習慣36-」(梶本修身著・ダイヤモンド社)が話題になっている。著者の梶本修身氏は大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授で、以前から“疲労”に関する多くの書を著している疲労医学の第一人者だ。
梶本教授によれば、私たちが常日頃、疲労回復に良かれと思って行っている方法が間違いだらけで、そのために疲れているのだという。
その代表格が入浴、それも特に温泉浴なのだという。これからが行楽のシーズン。温泉を予定している人は多いだろう。しかしこれが間違いなのだというから気になるではないか。梶本教授はこんなふうに論を展開している。
〈熱い風呂(43度以上)に肩までゆっくり入ることで体内では、体温、心拍、血圧などが大きく変化し、調整する自律神経に過大な負担がかかる。その結果、活性酸素が大量発生し、細胞が酸化し、疲労が起こり体をさらにボロボロにしてしまう〉
他の実験では、入浴後の血液中に現われる疲労の目安である「疲労因子」を測定したら数値は上昇していたという。
〈温泉に行って熱いお風呂に何回も入ることは自律神経の自主トレをやっているのと同じ。疲れを癒やす効果はまったくないうえ自律神経は鍛える意味もない。熱い温泉に何度も入りよく眠れた、というのは、疲れがとれたからではなくて、より疲れて寝込んでしまったから〉(梶本教授)
梶本教授の説によれば、温泉浴はひどい言われようだが、東洋医学を研究している三上藤雄整体師もこう言う。
「温泉で体調を悪くすることが多いのは湯あたりということもありますが、体温以上の湯に長く入ることにもあります。体温以上の湯に入ると、最初湯が熱く感じる。それが少し時間がたつと身体がお湯の熱を奪うので適温に感じてくる。さらに時間がたつと、ぬるく感じてくる。それは、皮膚が“開いて”身体の熱が奪われるためなんです。そうなると体の機能は低下してくる。そして体質が東洋医学でいう『虚』である人は、風呂に入るとその疲労はさらに大きくなります。現代は虚の人が増えている。体を使わない頭脳労働が多くなったからだと思う。熱い湯での長湯は厳禁です」
ただし入浴が悪いとわけではない。梶本教授によれば、正しい入浴方法をすれば疲労回復が期待できるという。
〈40℃ぐらいのお湯に半身浴でつかること。これで血行がよくなるし、体温調節のためのエネルギー消費も少ない〉
正しく入浴するのも意外と難しい!?
(谷川渓)