さて、「白血病パニック」の波紋が広がる中、池江の早期回復を願いつつ、東京五輪出場の特例を模索する動きも伝わってきた。スポーツライターが解説する。
「12日の水泳連盟の記者会見で、詳細な診断名に関して『まだ時間がかかります』と上野副会長は話していましたが、通常は検査して入院が決まった時点で判明し、翌日から治療が開始される。緊急帰国が8日だっただけに、すでに水連は把握していたはず。伏せた理由は診断名がわかっても、先行きに関しては個人差があり、家族への配慮もあったと推測できます。一方で、復帰時期についてさまざまな想定を検討する時間が欲しかったのかもしれない。実際、三木コーチが『可能性はゼロじゃない』と発言していたように、翌日以降、JOCや水連、日大などの周辺関係者から、東京五輪出場の特例案が聞こえ始めてきたんです」
競泳の五輪出場権は常に明確で、20年4月の選考会レースの一発勝負。過去には世界選手権で表彰台に上がる実力を持ちながら、選考会で派遣標準記録に0.05秒足りず、涙をのむ選手もいた。
「個人出場は実にシビアな世界ですが、リレー種目となると4人の総合タイムに加え、5人目の予備登録も絡むので、選考会以降に実績などを踏まえてエントリーを決定することもありえます。もちろん、今年7月の世界選手権では、池江抜きのチームで世界12位以内に入って東京五輪の出場権を得なければなりません。しかし、池江が年内に競技復帰し、順調に練習を積めれば、4月の予選会に間に合わなくても、リレーであれば7月の五輪本番に滑り込むことは可能でしょう」(スポーツ紙記者)
たとえ競技は無理でも、東京五輪を応援する側で活躍してもらうケースも想定されているという。民放局スポーツ記者が話す。
「20年3月12日にギリシャで聖火採火式が行われ、3月20日に宮城県の航空自衛隊松島基地に聖火が到着します。そこから全国を経由し7月10日に東京入りして、24日の開幕式を迎えるんです。開催地の東京に限り15日間、のべ200人規模のランナーが検討されているだけに、回復の状況しだいでは池江が聖火ランナーとして登場するシナリオもゼロではない。人気取りをしたい、五輪組織委員会や東京都が動くことが考えられますね」
この騒がしさ、誰もが1日でも早い回復を祈ってやまない裏返しと言えよう。