がれきの問題も深刻だ。岩手県では、東日本大震災で、525万トンのがれきが発生したが、昨年11月時点で処理されたのはたったの27%。昨年10月には、岩手県議会に全国の自治体や住民から1000件近い「受け入れ拒否」の陳情が寄せられた。「福島第一原発の放射能汚染の可能性がある」というのが理由だった。
仮設住宅で暮らす人たちが次に住む場所の確保も進んでいない。政府は、津波被害を避けるために新しい住宅は高台に移転すべきとの方向を示している。被災した各自治体も防災上の観点からその方針に賛同しているが、進捗状況ははかばかしくない。宮城県庁の職員が打ち明ける。
「高台の場所が県有地ならすぐに着工できます。しかし、地権者が津波で行方不明だったり、相続がきちんと行われていなかったりで用地交渉がほとんど進んでいないんです」
さらに、霞ヶ関の関係省庁の縦割り行政という壁が立ちはだかる。土地の移転や造成、住宅建設は管轄が複数の省庁にまたがるため遅々として進まない。用地取得を例にすると、登記関係は法務省、憲法解釈については内閣法制局の管轄。そこの調整がうまくいっても、建設や造成は国交省、山林の場合は農水省が絡むので、とにかく煩雑な手順と時間がかかるという。
「各省庁が単独でできるものは、どの役所もスムースに動いてくれています。でも、複数の役所にまたがるものは一向に進まない。所有者が亡くなっていたり、明らかでない用地への移転に関しては、市町村が決められるといった特例を定めてくれればいいのですが」(前出・宮城県庁職員)
前出の長谷川議員も、この種の行政の「お役所的」な紋切り型の対応は数限りないと指摘する。
「原発事故による損害賠償の指針を作る原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)の事務局は文科省にあるのですが、11年8月の中間指針では自主避難者への賠償を認めませんでした。被災地の方々からも、この点について『何とかしてほしい』という要望は多く、私たちも改善に動きました」
こうした働きかけが功を奏し、11年12月には自主避難者への賠償が正式決定された。
また、福島県内の農家からはこんな声も聞いたという。放射性セシウムの吸着効果のあるゼオライトという鉱物を織り込んだ繊維を水路に設置して、農業用水の除染を行いたいと申し出たところ、前例がないという理由で農水省が補助金を認めなかったというのだ。
前出・長谷川議員が続ける。
「こういった声は、小泉さんをはじめイレブンが、時間をかけて現地を回ったからこそ聞くことができたと思います。政府与党というのは、国会の委員会で追及されるのをいちばん嫌がる。だから青年局のメンバーが、それぞれ所属する委員会で現地の方を参考人としてお呼びするなどのくふうをして取り上げました。特にテレビ中継のある予算委員会は効果大なので、質問に立てるよう働きかけたりもしました」