平日夜のリラックスタイムに襲いかかった新潟・山形地震は死者こそ出なかったものの、ケガ人は30名を数え、今後の余震も懸念される。そうした中、クローズアップされるのが、巨大津波の恐怖なのである。
新潟県村上市在住の高田宏行さん=仮名=は、地震発生時に自宅で晩酌の最中だったという。
「もともと、家は父の代から住んでいて築年数も古いので、正直、最初にドカンと突き上げるような揺れがあった時は腰が抜けそうになった。その後、停電になり大きな横揺れが続いた時に、ミシミシと柱がきしむ音もして慌てたな。ちょっとお酒が入っていたから、よつんばいで外に飛び出たよ。周囲も古い家が多いから、かなり屋根の修繕が必要な状態。我が家は幸い、屋根をふき替えていたから問題なかったけど、食器棚の中ががちゃがちゃになっていた。被害のなかった親戚の家に集まって夜を明かしたよ」
6月18日22時過ぎ、山形県沖で発生した、マグニチュード6.7の地震。新潟県村上市で最大震度6強を記録した。日本海側を中心に激しい揺れを感じたばかりか、同日23時頃には新潟市で10センチの津波を観測したほか、山形県や石川県でも微弱ながら津波が到達した。一方、今後も同程度規模の地震の可能性があると指摘されているのだ。地元社会部記者が明かす。
「東日本大震災以降、地震による大津波の被害が認知されるようになりましたが、それ以前にも日本海側では津波被害による死者が発生しているケースが複数報告されています。中でも93年の北海道南西沖地震(M7.8)では、奥尻島(奥尻町)北西沖が震源で、地震発生から数分後に奥尻島に津波の第1波が到達。奥尻島を中心に死者は202人に上った。64年の新潟地震では、死者が26名に及びましたが、村上の港に停泊していた船がなぎ倒されるなどの被害が出ています」
また07年には新潟県中越沖地震(M6.8)が発生したほか、今回の新潟・山形地震では山形県内史上初の震度6を観測。あらためて、東北・信越・北陸にかけての日本海側で巨大地震の可能性が懸念されているのだ。
東京大学地震研究所の飯高隆准教授によれば、
「地震の種類は大別すると、プレート境界型と活断層型に分かれますが、今回の地震は、震源の深さや位置から考えると、活断層による地震の可能性が高い。19日の政府の地震調査委員会でも『海底下にある未知の断層が動いた』との可能性が議論されているようです。また、歴史的にみて大きな地震が幾度も発生している状況証拠などから、83年の日本海中部地震や93年の北海道南西沖地震の震源域周辺にはプレート境界の存在が提唱されています。今回の山形県沖の震源については『日本海東縁変動帯』や『ひずみ集中帯』と呼ばれており、ひずみが集中している可能性が示唆されている場所です。今回はこのひずみが集中している領域の中で地震が発生していると考えていいのではないかと思います。また、この付近は活断層がたくさんあるだけに、数年や数十年という期間でみると、今後も今回と同じクラスの地震が起こる可能性は十分に考えられる。注意が必要です」
今後も予断を許さないということだ。