人間が作り出した「核のゴミ」と、人類との共存は不可能だ。フィンランドでは使用済み核燃料を地下約450メートルの岩盤地層に埋設。フィンランド語で「洞窟」を意味する最終処分場「オンカロ」は、首都ヘルシンキから約250キロ離れた、バルト海に浮かぶオルキルオト島で整備が進められている。
「付近一帯は花崗岩などの固い結晶質の岩盤で、10億年以上活動していない安定した地質です。オンカロでは、使用済み核燃料を金属製容器に数万年から10万年、地下で隔離する予定です」(経産省詰め記者)
しかし、日本のような地震国では海底埋設に問題がないとは言えない。海洋地質学者で琉球大学理学部の木村政昭名誉教授が憤る。
「日本の周辺には海底活断層がたくさんあるはずです。もし誤って活断層の中に埋設してしまった場合、活断層が動き、M7クラスの大地震が発生すると、核のゴミを封印したはずの容器も崩壊して、放射能が拡散するでしょう。そうなると、世界中の海が汚染される」
前出・経産省詰め記者によれば、
「日本は11年、原子力の技術支援と引き換えに、モンゴルに最終処分場を造る構想が浮上しましたが、モンゴルが拒否し、頓挫した経緯がある。どうして『トイレ(処分場)のないマンション(原発)』を作った日本のトイレを引き受けなければならないのか。モンゴルが反発するのも当然です」
何の展望もないまま原子力政策を進めたツケが回ってきた結果、今度は海底に目をつけたというわけである。島村氏が嘆息して言う。
「日本人が日本列島に住むようになって1万年がたちますが、原発から排出される核のゴミは有害性がなくなるのに数万年かかる。見えないところに保管しておきたい気持ちはわかりますが、そんなものを海底に埋設して、何かコトが起きたらどうするんですか。日本近海といえども、海は日本人だけのものではない。放射能の被害が世界中に拡散したら、いったいどう責任を取るのか。経産省が考えていることは安直すぎますよ」
きたるべき大地震で陸地は惨状に見舞われ、海からはゴミがまき散らす高濃度の放射性物質が襲いかかる。もはや逃げ場のない地震災害を、我々は座して待つしかないのか。
9月1日は「防災の日」だという。明日にでも来るかもしれない大地震で生き残るために、専門家の警告に真剣に耳を傾けるべきではないか。