これも、甲子園ヒーローの宿命かもしれない。北海道日本ハムファイターズの吉田輝星がプロ3度目の先発マウンドで「6失点KO」を食らったのは、去る8月14日だった。試合終了を待たずに二軍降格も通達され、その後の二軍戦でも、「雨天中止。先発は翌日にスライド」という不運にも見舞われた。
そのスライド登板した24日のDeNA戦では、1回を三者凡退、3回には三者連続三振を奪うなどいい立ち上がりを見せた。が、5回には、3ランを浴びるなどプロ最長の6回を投げたものの、4安打4失点を喫し降板した。そんな吉田については、こんな情報も聞かれた。
「相手チームは吉田が投げるとわかると、いつも以上に力が入ると言っています。もちろん吉田が憎いのではありませんが」(スポーツ紙記者)
いつも以上に力が入る理由は簡単だ。この時期は高校野球関連のニュースも入る。そのため、昨夏の甲子園ヒーローである吉田が好投すれば、通常のプロ野球報道よりも長めに扱われる。吉田を相手に三振を喫すれば、全国ネットでさらされるという恐怖が相手打線にはあるようだ。
「松坂大輔が新人だった1999年を思い出してください。プロ初先発となった同年4月7日、松坂のストレートに空振りを喫した当時の日本ハム打線、そして、豪快な空振りをした片岡篤史氏(前阪神コーチ)においては、いまだにそのシーンをテレビで放映されています。そういうふうになりたくない、と」(前出・スポーツ紙記者)
気持ちは分かる。しかし、吉田にすれば、相手チームの、こうした「吉田の引き立て役にされたくない」の思いに打ち勝たなければ、成長はないだろう。
「吉田に関しては、栗山英樹監督を始め首脳陣は投球数だけではなく、全力投球することにも制限をかけているようですね。吉田も未熟ですが、全力を出し尽くしていません」(球界関係者)
吉田にリミッターを掛けたのは、昨夏の甲子園での連投による疲労というよりも、疲労によって投球フォームのバランスが崩れ、それを修正できていないためだという。壊れたままの投球フォームで全力投球すれば故障するとの意味だそうだ。
「プロ野球選手の間では、甲子園出場組と予選敗退組に分ける傾向もあり、後者はコンプレックスを持っています」(前出・球界関係者)
「吉田に抑えられたら、ニュースになる」という思いは、コンプレックスも関係しているようだ。そう言われてみると、日本ハムは吉田のほかにも斎藤佑樹、中田翔、清宮幸太郎など「甲子園スター」が多い。栗山監督は終盤戦での巻き返しを狙うが、そんな点から考えると、他球団選手のコンプレックスで返り討ちにされてしまいそうだ。
(スポーツライター・飯山満)