東京五輪でのメダル獲得を目指すバレーボール女子・日本代表にとって、9月14日から始まるワールドカップが重要な試金石となることは言うまでもないだろう。中田久美・代表監督の表情も厳しく、本気モードそのもの。世界の強豪を相手に厳しい試合が続きそうだ。
「五輪後も中田監督を続投させる意見が聞かれます。前回のリオデジャネイロ五輪で大敗した代表チームをここまで建て直した手腕、上向きになってきたチームをさらに強化させるにあたって、新監督を探すよりも中田監督を続けさせたほうがいい、と」(体育協会詰め記者)
中田監督は練習でも妥協を許さない。チームの精神的支柱でもあった木村沙織の引退後、代表チームにはこれといった中核選手がいなかったが、対戦チームに応じて選手を使い分けていく中田采配は、それなりに評価されているようだ。
しかし、こんな情報も聞かれた。
「中田監督になって期待が持てるようになったのは事実ですが、まだ国際大会で結果は出ていません。そのあたりについて聞くと、中田監督は代表チームの在り方について首を傾げていましたよ」(前出・体協詰め記者)
この発言が出たのは、W杯の会場の一つとなる横浜でのこと。代表チームはトップレベルでなければならないが、現状は若手の育成や経験を与える場になっており、中田監督は育成システムの改善が急務であると考えているようだ。
確かにバレーボールにも年齢別の代表システムはある。現に元東九州龍谷高女子バレー部の相原昇氏が若手世代の代表監督に就任。7月にU20で戦う世界ジュニア選手権に優勝し、8月のアジア大会でも、予選3試合3勝と好成績を上げている。だが、それだけでは足りないという。
中田監督は、本代表の一つ下のレベルでも代表招集して鍛え上げなければ、A代表の底上げはできないと考えているそうだ。
もっか、中田監督は控えの若手をテストしながら、試合に臨んでいる。その若手抜擢による敗戦を受け入れる余裕は「無い」ということだろう。
「勝ちにこだわらなければならない代表チームが若手育成の場になるのは、確かにおかしい。中田監督に正式に続投要請がきたら、制度改革を要望するかもしれません」(関係者)
サッカー、野球の代表指揮官も「若手の抜擢」を口にする。しかし裏を返せば、それは敗戦の言い訳をしているのも同然だ。
中田監督は度胸が座っていることでも知られている。この発言が広まれば、五輪種目の全競技で、代表チームの在り方が問われそうだ。
(スポーツライター・飯山満)